★母と息子の子供の日。3★
流しっぱなしのTVに映る去年の映像。
そこには、ヒカルの姿が。
それを見ながら、今のヒカルの事を私は考えてしまう。
(確かに心配は付き纏う…だけれど…、最近はそれでも、なんとなく大丈夫かなって思えてきたのよね。
ヒカルの生活スタイルに慣れてきたと言うのもあるだろうけれど…)
(一昨年は、急に一人旅に行ってしまったたり…プロを辞めると言ったり…口を利かなくなったり) (去年は、初めての北斗杯でピリピリして…しかもネクタイも結べなくて…) そんなヒカルだったが、最近はライバルの塔矢アキラを家に連れては一緒に打って楽しそうにしている。 (本当に…あの子がいてくれてよかったわ。)
若くしてプロになったヒカルだ。
自分では満足にネクタイも結べず…礼儀など無いに等しい。 (あの子がついていてくれれば、何かと安心ね。)
私は、ちょうどTVでは、壇上の上なのだろうか?ヒカルとアキラ君が二人並んでいる姿が映し出されたのを見て微笑む。
ヒカルの友人でありライバルだという彼…。
いつも家に来たときに会話する彼は大変礼儀正しく、見ていてとても気持ちのいい青年だ。 もし、自分がもっといくつも若かったら顔が赤くなっていただろう。 それに、父親も棋士という家庭に育ったアキラは、碁界について知らぬ事がないほどだ。 分からない事は、彼が教えてくれるに違いない。 (それにあの子がくると、最近話さなくなってたヒカルが会話するようになったのよね〜) プロになる少し前から、自分と話すのを面倒くさそうにするようになったヒカル。 今時の男の子で、このくらいの年頃なら当たり前の事だと…分かっている。 でも、やっぱり寂しかったのだ…自分は。 だが、塔矢アキラは、普通に親と話すらしい。 その事が、ヒカルにもいい影響を与えてくれていると思う。 (最近では、『分からないだろ!』とは言わずに碁の事…といってもイベントでの出来事だったりだが…を話してくれるようになったものね〜。)
その事が美津子には、とても嬉しいかった。
進学しなかったヒカルだから、同じ様な年代の友人を作るのは難しい事に違いない。
その中で、出会った人間関係は大事にして欲しい…そう美津子は願っていた。
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