★母と息子の子供の日。1★


空が青い。
緑が蒼い。
風が心地いい。

そんな気持ちのいいお天気が続くこの季節になると、進藤ヒカルの母・美津子には一つの心配事が浮かんでくる。
それは、息子のヒカルのことであった。

この時期になると、何か身辺が忙しくなるヒカル。
その心中を図りかねて、美津子も戸惑っているのだった。

-----------------------

(ああ、日が翳ってきたわ。お布団、しまわなくちゃね。)

日の落ちてきたベランダを眺めながら、私はぼんやりと思った。
それでも、何かやる気がしない。

今日から息子のヒカルは、泊りがけで同じ棋士の家で合宿だ。
昨年喜ばれたというので、今年もお弁当を作って持たせたり…ヒカルの持ち物の仕度とで先ほどまではドタバタしていたのだけれど。
人が一人いないというだけで、こんなにも家の空気が変わるのだから不思議だわ。

(いつもはうるさくて仕方ないのにね)

と私は、まだやんちゃ盛りの息子を思い浮かべて、こっそり笑う。

とは言え、最近ではうるさい方がホッとする。

人より早く、社会に出て大人になっていくヒカル。
男の子は、勝手に巣立っていくものだと…分かっていても、やはり寂しい。

(それに…、あの子は急に変わったから…)

飽きっぽくて、我がまま放題だったヒカル。
一人っ子で、甘やかしてしまったかしら…と心配していた頃が懐かしい。

自分で、見つけた道を進んでいける人は多くは無いとは思う。
ヒカルは、困難な道とは言え自分の希望の道を進んでいるのだから。
親としては喜ばしいことである。
だけど…

(前にはイヤになるくらい明るくて元気だったのに…)

いつからだろうか?あまり笑わなくなって、ボンヤリする事が多くなったのは。
自分とも会話が少なくなった。

『母さんなんか碁わかんないくせに』

去年言われた言葉が、胸に引っかかっる。

(ヒカルのこと…分かりたいと思っても無理なのかしら?)

自分では分からない世界に身をおいている息子なのだ。
その戸惑いが、ヒカルにも分かるのかもしれない…。

(昔から、癇の強い子だったから…)

本当にデリケートで、よく夜泣きをしたものだ。
でも、その小さくてフワフワと暖かかった守るべき宝物は、自分の手から巣立っていく。


私は暮れ行く庭を見つめながら、寂しさを紛らわしたくって大きく息を吐いた。

 

 

2
 
−−−−−−−−−−−−−
 
  押していただいてありがとうございます!!やっと5月分に出来ました!NOVEL部屋の「オレとアイツの子供の日。」と連動したSSです。