★永久に君と8★

THANKS 10000HIT&七夕祭り

--ヒカル3--

(やばかった〜!)

オレは、台本の隙間から和谷がいないのを確かめて顔を上げた。

(本当は、この先も覚えてんだけど…)

昨日やった練習で、一通りのセリフは入ってるのだ。

でも…

(思い出しちまったんだもん。)

昨日の夜を…。

塔矢が、さっきの和谷とおんなじみたくセリフを読んでくれて…オレはそれにあわせて練習して…。

「『織姫、彦星よ!お前らは働きもせず遊んでばかりとは何事か?もう会うことはならぬ!!』」

「織姫〜!」

ここは、いちゃついてばっかいて仕事をサボってた織姫と彦星が、織姫の父親である天帝に仲を裂かれるシーン。

ホントなら、ここで織姫と彦星が引き裂かれながら名前を呼びつつ、舞台の左右に分かれて去っていく予定になってるんだけど、いつまでたっても塔矢が織姫のセリフを読まないもんだから、オレは真剣な顔で台本を見ている塔矢の顔を覗き込んだ。

「おーい、塔矢?どうした??」

その目の前で手を振ってやると、塔矢は真剣なまなざしをそのままにオレの方へと顔を移動させてきた。
こういうときの塔矢はなんか、迫力があって怖い。

(ってゆーか、オレ今日何回コイツにビビらされてんの??)

納得のいかないものを感じて、オレはむっとした顔で奴の視線を受け止める。

「なんだよ?」

オレが、ちょっとひるみながら奴にいうと…

「キミはどう思うの?」
「はぁ?」
「キミが、こんな風に僕らの中を他人に引き裂かれたらどうする?」

(はぁぁ??)

相変わらず…コイツの考えることは、よく分からない…。
いや、分かりやすい?

「オレ達は、別に遊んでばっかじゃねーじゃん。用は、怠けなきゃいいってことだろ??」

オレが、茶化して終わらせようとしたのに、目の前の塔矢の眼ってば真剣で、オレは息を飲む。

「僕なら…、僕ならキミをさらって逃げる。」

「はぁ?」

いきなり何をいいだすのかと思えば…。

ため息をこらえているオレに気付きもしないで、自分の考えにとらわれちまったのか塔矢はオレの手をつかむと

「僕は、キミさえいればいいから…他は捨てる覚悟だ!」

「囲碁は?」

「囲碁は、キミがいれば打てる。」

「はぁ…そうだな。」

確かに…オレだって、コイツと打てれば満足だ。

(だけど、強くなるって言うのは…それだけじゃ、だめだろ?)

塔矢と打ってるのは楽しい。
新しい手がひらめいたり、追い詰められてぞくぞくしたり。
だけど、神の一手を目指すには、今のオレ達だけじゃ掴めないんだと思う。
色々な人と打って、勉強をして…オレ達また変わってくんだ。
オレが、佐為と出会って変わったように。
お互いの一部を共有してるみたいに。
出会った人たちの一部を共有して変化して…オレ達は、創り上げれるんじゃないかな?
そう思うから…。

「進藤、キミは?」

オレは、奴に聞かれて即答した。

「オレは、捨てない。」

「え?」

望みの答えと違った答えがオレから返ってきて、塔矢の顔がちょっと情けなくなってる…。
(ホント…お前は馬鹿だよ…)

オレは、笑いそうになるのをこらえて勘違いされないように塔矢の眼をみる。

「オレは、捨てたくない。だって、お前を創り上げてきた世界とか親とか…お前に捨てさせたくない。オレも捨てたくない。それに、オレ達だけじゃ勉強しきれない事だっていっぱいあるだろ?だから、オレは捨てない!!」

「進藤…」

「だから、オレ達は勉強し続けるんだろ?オレはさ、強くなって…その、さ…周りの奴になんて、引き裂かれないぐらいに…なりたい」

オレの最後の方の声は奴に聞こえたか、わかんない。
恥ずかしくって、すごく小さくなってたから。

(でも…聞こえたよな?)

だって、途中から抱きしめられて…すごく近くにいたんだから…。

で…その後のことを思い出してたら、オレはまた顔に火がついたかと思うほど、血が上ってきちまって台本からあげた顔を、またその中に埋めた。

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