--アキラ2--
彼がうそを言っているのは分かっていた。
彼は、うそつきだから。
僕は、そんな彼の行動も表情も…見逃さないようにいつだって見てるから。
(どんなにうまく隠したつもりでも、僕だけはごまかせないよ?)
僕は彼の手の届かないところで、冊子を開く。
案の定、そこには棋譜などなく…
「織姫…彦星様、貴方様と一日でも一秒でも…離れたくはありません?」
そこには、恐らく台本と思われる文字が並んでおり…
「これは?」
僕は、彼の嘘を攻めるのも忘れてぽかんとしてしまう。
何かあるとは思っていたけれど、彼が演劇に興味があったなんて?
と、彼が罰のわるそうな顔で口を尖らせる。
「ったくよ〜!お前、人のモン勝手に!!」
ブツブツ言っている彼に冊子を見せながら
「キミ、演劇に興味があったんだ?」
「あるわけねーだろ!?和谷が勝手に!!」
そう言って、彼はしまったと言う顔をして口をつぐむ。
(そうか…和谷君…ね?)
これで、首謀者は分かった。
彼がはかなくても、和谷君に聞けばすぐに事は明らかになるだろう。
でも、そんな風に人づてでなくやはり目の前の人物から真実を聞きたい。
僕がまっすぐ彼を見ていると、渋々彼が口をひらく。
「だからさ〜。和谷が持ってる囲碁クラスってのが子供ばっかのクラスなの!んで、七夕くらいなんか催しやってやろうってことになって、オレも借り出されたの!!」
進藤が言うには、院生の頃からの友人である和谷君がアルバイトで受け持っている子供クラスのクラス内イベントで、劇をやって見せることになったらしい。それも、何故か子供たちにさせるのではなく教えて側が演じるらしいのだ。
「なぜ?彼だってプロだ。そんなことをしている暇があるなら…」
僕が、怒りを感じて口を開くと進藤は、
「あのな、今の子ってさ、なんか四季折々のイベントとかと掛け離れた生活っての?送ってるわけよ。塾に行ったりさ〜、色々忙しくて昔からある行事には興味もないし家でもやったりしないんだって。」
僕の家では、毎年古くからの行事は一門で行うことになっていたからか…彼が言うことが信じられなかった。
「囲碁ってさ、昔からあるもんじゃん?それこそ、平安の貴族が遊んだりさ…。昔からの行事を楽しむことも、囲碁を打つものとして必要だって思うわけ。」
「そうだね。それは、僕も分かるけれど…なぜキミが?」
そこまで言うと、それまで活き活きと力説をしていた彼の目が泳いだ。
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