★永久に君と24★

THANKS 10000HIT&七夕祭り

7/2…イベント当日

--和谷2--


『こうして…織姫と彦星は…年に一度だけ会うことを許されたのでした…』

門脇さんの静かなナレーションが聞こえる。

(終わった…)

俺は、簡易に作った劇用の幕(カーテン)を引くと室内の電気が一度暗くなる。

小さな教室の隅々から、拍手が起こって…電気がつくと、そこには、ちっちゃな未来の棋士達のチッチャイ顔に満面の笑みが浮かんでて…。

(ああ…成功したんだ…)

なんか、ジワジワ〜って、俺の体中に嬉しい!!って気持ちが回ってきて思わず眼の端っこに涙が浮かびそうになって、ぐっと歯を食いしばる。

(ここで、泣いたりしたらさ…、この後こいつ等に示しがつかねーモンな!)

見習い講師だけど、俺だってプロで先生なワケだ!!
大きな拍手の中、もう一度幕を開けると、一層拍手が大きくなる。

オレが舞台上の出演者と裏方の皆に前に出るように合図を送ると、皆照れたみたいに舞台に向かう。
ぺこりと、お辞儀をすると

「あ〜和谷先生〜!」

「進藤さんだよね!!」

子供達が、口々に声を上げているのが聞こえる。

その事に嬉しく思いながら、オレはもう一度頭を下げると、皆に合図する。

今回の事って、一応有志でやってるし…他の棋士には内緒って事でやってるから、挨拶とかは抜きにしたんだ。

(ま、進藤とかは…紹介とかしなくても、皆しってるだろーけど。)

悔しいことに、プロになりたくてこの囲碁教室に通ってる子供の中には塔矢や進藤に憧れてって子も結構いるのだ。
タイトルすらとってない若手に…いや、塔矢は別としても、進藤がそんなに注目を浴びてるのは北斗杯のせいもあるだろうけど、アイツは結構子供受けもいいから。

(ま、俺だって子供受けは負けてねーけどな!!)

って、勝負してもショーもないとこでエバってどうする??って、自分で内心突っ込みながら、まだ拍手はなってたけど、後は院生指導の先生達に任せることにして…俺達はコソコソと隣の部屋へ移動した。

「あ〜キンチョーした!!」

部屋にたどり着いた途端、緊張感なんて無いような様子で進藤が着物を脱ぐのを横目で見てオレはおかしくなる。

「お前、セリフ一回飛んだだろう?」

あんなに練習じゃ完璧だった進藤なのに、本番の一番最初の織姫とのやり取りでいきなり黙り込んだのには…

(ホントにあせったぜ!!)

俺がニヤニヤしながら、進藤の頭を軽くかき混ぜると

「別に…チャンとつないだじゃん!!」

嫌そーな顔で、ふれっつらする進藤が面白くて…

「アレは、織姫さんのお陰だろーが!!」

な?と、オレは今日の一番の功労者であろう織姫さんを振り返ろう…として

「?あれ?織姫ちゃんは?」

いないのだ…。

(あれ?さっきまで…向こうの部屋出るときまで…はいたような気がしたのに…??)

「どうしたんだろう?俺、ちょっと見てくるよ」

そう言って、部屋を出て行く和泉さんに、

「あ!和泉さん!!行かなくていいから!」

進藤が、座ってたら椅子から立ち上がると和泉さんを引き止める。

「なんだよ、進藤?どうしたんだよ?」

皆も、急に声を上げた進藤を不思議そうな顔をして見てるのになんとなく、バツが悪いモンでもかんじてんのか、モジモジ(っていうのかな?)しながら、奴が

「なんか、直ぐ帰んなきゃなんないみたいなこと言ってたよ!!一緒に舞台袖に引っ込んだときにさ。」

「ああ、そうか。進藤と織姫、一回だけ一緒に袖に引っ込んだときあったもんな。」

納得したように和泉さんがうなずく。

(なんで、コイツこんなにホッとした顔してんだ?)

俺が、不思議に思ってると背後で越智が

「でも、そんな時間あったのかな?」

って、小さくいって、眼鏡を上げた。

「っむ!あったんだよ!!なんか切羽詰まった感じでさ〜。親も学校もうるさいから、男ばっかのとこで役者まがいの事やったのが誰かにばれたらまずいんだって!!だから、あの子の事は、あんまり口にしないでやってよ!」

「なんだ〜進藤?やけにあの子の肩もつな〜。さては、惚れたな??」

年長の門脇さんは、進藤の実力を認めながら年下でやんちゃな進藤をかなり可愛がってる(気がする)。
その可愛がり方は、大抵こうやって何かを見つけてはからかってるようなもんで…それに対して進藤は、毎回ご丁寧にも反応しては皆の笑いを買うもんだからこの光景も慣れっこだ。

(でも…一緒に演技してる内に…って事もあったかもな。)

今回は、結局練習などで顔合わせすることもなかったから初顔合わせ…な二人だったわけで。

(それじゃー、実るモンも実らねーわな!)

でも、奈瀬の話では織姫ちゃん(結局、だれも名前すら知らなかったことに後で気付いた為、オレ達はこう呼ぶことにしたんだけど…)は、進藤のファンだって話しだし…

(遠めで横から見ただけだけど、メチャクチャ可愛かったもんなぁ〜)

流れるような黒髪にすらりとした体つき、パッチリとした眼に赤い唇…。舞台だったこともあって、結構濃い目の化粧をしてたとはいえ、十二分な美少女だ。

(うーん、進藤にはもったいねーよなぁ)

とはいえ、大事なカワイー弟分だ。今のままじゃ、囲碁馬鹿まっしぐら。彼女も出来ないわけで…

(これも、それも、あいつが悪い!!)

四六時中、塔矢アキラと打ってばっかいるから進藤は、他のことには気がいかないんだってオレは思ってる。

(ただ、打つだけならいいけどよ〜、同居までしてんだもんなぁ〜。)

どっちが言い出したのかしらないけど、二人は最近同居を始めて…棋院中を驚きの渦に巻き込んだのは記憶に新しい。

どうも、一人暮らしするには危なっかしい進藤に、塔矢がうるさく言った挙句に…っていうのが、一番有力な噂だけど実際のところは、本人に聞いても

『なんとなく〜、一緒に住んだほうが色々便利だし…いつも打てるじゃん!!』

だそうな…。

(ホント…囲碁馬鹿…。)

ということで、オレはひじょーに進藤の行く末を心配している。

(お前は棋士である前に人間なんだぞ!!もっと、人間らしく生きろ!恋をしてくれ!彼女をつくってくれ!!)

そうじゃないと、オレはウカウカと彼女もつくれん!!(って、別に進藤のせいじゃねーけどさ…涙)

(進藤には、また彼女と会う機会でもつくってもらって…と、もしあの子と上手く行ったら、あの子の友達でも俺、紹介してもらおっと。)

きっと、彼女の友達ならさぞ美人だろう…オレは、まだ見ぬ彼女の友達に向かって、こっそり挨拶をした。


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