--アキラ1--
進藤がおかしい…。それはいつものことだけど…。
珍しく食卓の上で、何か冊子のようなものを広げて夢中になっていた僕の愛しい恋人の姿を見つけて、僕は持っていた本を手に、その様子を眺める。 隣の椅子に腰掛けた。
口をわずかに動かしながら、その冊子を読みふける姿は今まで見たことがないもので…。
僕は気になって
「進藤?」
声をかけてみる。
予想通り反応がないのに、僕は知らず知らずとため息がこぼれる。 いつもながら、彼は集中しはじめると周りの声が聞こえなくなる。 もちろん、勝負をする棋士として、その集中力はすばらしいものだと…感心に値するけれど…。
(進藤…今、君は僕の存在など忘れているんだろうね?)
彼の真剣なまなざしが自分でなく他のものに向かっていることが、無性に腹立たしくて、わざと僕に気を引きたくて…彼の体に覆いかぶさるようにして、その本を覗き込む様に彼の隣の椅子に座る。
流石の彼も、大きく音を立てて座られた椅子と人の気配に驚いたのか、反射的に顔を上げた。
彼の目が僕に向いたことに満足しながら、僕は
「進藤、何をしているんだい?」
そうして、彼の手元を覗き込む振りをした。
正直、彼が僕の方を向いてくれた時点で、僕はその冊子にはあまり興味がなくなっていた。
彼の瞳だけにとらわれていた。
それなのに… 「うわ!見ちゃだめ!!見るなっつの!!」
彼が自分の手元を隠す。
その行動に、僕の眉が一気に上がったのを僕は感じた。
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