★永久に君と19★ THANKS 10000HIT&七夕祭り |
7/2…イベント当日 --行洋3-- すっかり、上機嫌になった妻と院生の彼女の会話が弾んでいるようで、正直私はホッとした。 (全く…) 今回のことは、はっきりとアキラが進藤君との仲をはっきりと私たちに告げないから…いけない。とも思う。 明子は、ただただアキラの幸せだけを願っているのだから。 (母親と言うのは…) 父親には理解できない、何かがあるのだろう。 私とてアキラは可愛いが、弟子でもあるあの子には時には厳しく接してきた。 私の目から見て、そんなアキラに明子は決して甘かったわけではない。だが、今こうやってただ息子のプライベートに探りをいれている姿は、がむしゃらで父親の私には決してできないものだと思う。 (あの子の体裁も考えれば…) 今日のことは、明子のやりすぎだ。だが、母親というのは時に息子自身の体裁など飛び越えて、突き進んでしまうもの…だと言うことに、私は改めて気付かされた。 (まだまだ、私も…) 未熟であったか…と、女性二人のコロコロとはじけるような笑い声に、茶をすする。 と、ふと奈瀬嬢の言葉に明子が息を呑むのが分かった。 「まあ!!進藤さんに?そんなファンの方がいらっしゃるの?」 「ええ。私にとっては、弟みたいな…男としては、ちょっと見れないんですけど。結構、院生の子にはファンが多いんですよ。今から、あいつの誕生日に告白しちゃおうかって悩んでる子だっているんですよ??」 私はふと、自分の耳に入ってきたその奈瀬嬢の言葉に、耳をふさいでしまいたくなった。 案の定、明子の空気がまた冷え冷えとしてくる。 (…明子…。) 母親が気をもんだところで、仕方ないことだってあるだろう…人の心なのだから。 とはいえ、囲碁一筋で不器用な息子のために何かしてやりたいと言う気持ちも分からぬでもない。 「でも、私言ったんですよ。まずは、プロになることが先決でしょ?って。その子は、それで何とか告白はプロになってからって思ったみたいなんですけど」 明子がまた、固まってしまったのをみて焦ったように奈瀬嬢が手を振りながら答えるのに、ようやく妻も笑顔を見せる。 「そう…そうよね?院生の方には、まずプロを目指していただかなくっちゃね〜?」 また、ホッとしたように微笑む明子に私は、頭痛を覚えた。 (こんなにあからさまでは…奈瀬君が…おかしく思うのではないか?) 自分の息子のことならいざ知らず、明子が気にしているのはあくまで進藤君・息子のライバルなのだ。 私が思案していると、奈瀬嬢は私と妻を見て可憐に笑う。その笑顔は、少し妻に似ていて私は目を疑った。 「そうですよね!私もそう思うんです。でも、私が進藤と仲がいいって知ると…結構取り次いでほしがる女の子が多くって〜。」 困ってるんです…と続ける、彼女の笑顔に、私はようやく察した。彼女はとっくに気付いているのだと。 どこまで、二人のことを知っているのかは分からないが、どうやら何か察するものがあったらしい。 (当然と言えば、当然…。) 今日の明子を見ていれば、嫌でも気付くであろう。 明子も、少し目を見張るように奈瀬嬢の顔を見ていたが、ふっと笑った気配がして私は彼女の方を向いた。 「うふふ。奈瀬さんとは仲良くなれそうね?ねぇ、またいらしてね?日本にいる間は、私も…夫も時間がありますから、また指導碁のついでに私とおしゃべりして頂戴ね?」 『ね?いいわよね、貴方??』と笑う明子の顔はやはり、先ほどの奈瀬嬢と同じで… (女と言うのは…) 私には、計り知れない何かがあるのだと…改めて思い知らされて、ただうなずいた。 (アキラが帰ってきたら、今日のことを告げるべきであろうか…?) 私は朝早くに出かけたまま、帰ってこない息子を思い…また頭を悩ませた。
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