★オレとアイツの子供の日。2★ 「でもエエよなぁ〜、オマエらは!好きな時にいつでも打てるやん。」 社の明るい声に、オレはまた自分が考えを飛ばしてたことに気づいてハッとした。 「あ〜、まあな。」 オレが、気づかれないように相槌を打つと社が、オレの顔を覗き込むように 「やっぱり、結構打ってるんか?」 オレは、話を聞いてなかったこともあって、何のことを言われてるのかわかんなくて… 「阿呆!塔矢とや!!」 行き成り、チョップで額を叩かれて… 「ワワッ!」 いつもならこんな事で、倒れるようなオレじゃないんだけど。 「わぁ!進藤!!」 すごい声がして 『グィ』 オレは、体が傾くのが止まったのを感じて『ギュッ』とつぶった目を開ける。 と、そこには社の心配そうな顔が…。
なんだか、スゲー焦った声を出す社に、逆にオレもビックリしちまって、 「なんだよ!こんなん、へーきだつーの!!」 そういって、笑いながら社を押した。 「そうか〜?」 社のヤツ、なんだか不思議な顔…ホッとしたような心配したような…そんな顔をしてオレを見て… そんなに自分では変わったと思ってなかったから、ちょっとショックだった。 オレはわざと明るい声を出して社を振り返る。 「ほら!さっさと、行くぞ!!」 オレは社の一歩前を歩きながら、見慣れた街灯に目をやる。今年は、地図なんて持ってない。 最近では塔矢んちまでの道は、オレにとって慣れたものになってて…実際、目をつぶったって間違えることなんて、ないと思う道だ。 ただ、この道を一人で歩くことは少ない。 塔矢は、絶対にオレを駅まで迎えに来るし(いい加減、いい!っていってんのに!!)下手すると、家まで送っろうとしたたりするし…。 今日だって、迎えに来るとか言って聞かなかった(どうも、去年の北斗杯で、オレが塔矢んちに来るまでに社を連れて散々迷ってたことが尾を引いてるらしい…)のを無理やり、やり込めてきたのだ。 (この道は、佐為とは歩いてないな…) 佐為といた頃は、塔矢はオレの目標でライバルで…今みたいに、一緒になって打つなんて考えられなかったから…。 (ましてや、打つ以上の関係になっちまったなんて…なぁ) 佐為が知ったら、どう思ったかなぁ? と思うと、なんだか頬が熱くなってくる。
無言でうつむいて歩いていたオレの頭が、急にクシャっとまぜられる。 「わ!何すんだ!!」 オレは、急にきた衝撃に驚いて社を見上げる。 と、社はニカっと笑って 「ようやくコッチ見おったな!!」 悪戯っこのようなその目の社。 オレは、少しムッとしながら…目茶目茶になった頭を手で直す。 と、社がオレの頭に手を伸ばして「オレもなぁ、悩んでる事はいっぱいあんねん。」 「なんだよ?」 「色々な。未だに親〜うるさいしなぁ。でも、今は北斗杯の事だけや。」 オレが驚いて、社を見ると 「オレは今年はどうしても勝ちたいねん。」 社はいつも真っ直ぐだ。 単純…って思うときもあるけど、でもその真っ直ぐなとこがオレはこいつのいいとこだと思ってる。 オレは、髪を直す手を留めて 「オレだって、今年は勝つつもりだ!」 「そやな。オレな、負けが続いて落ちこんどったときに先輩に言われたんや。『勝つことだけがオレ達、棋士の成長の証』だって。考え込むくらいなら、ひたすら打てって。」 「…」 そう、オレも…院生の時に負けが込んでた時に佐為に言われたっけ。 『見極めてギリギリまで踏み込むのです。恐れを勇気に変えて』 そうやって、また何度も何度も繰り返し打ったんだ。 (そうだな…、打つことだけが…お前と会える証だもんな) オレが黙ってるのを、見てた社がオレの頭に『ポン』と手を置いた。 「でもどうしても辛いんやったら、オレに言うんや!友達やろ?」 そう言って笑う社が嬉しくて、オレもつい笑っちまった。 「お前、結構くさいヤツ!!」 「な!人が心配してやってんのに!!」 オレがからかって、社に指を突きつけると、社は向きになって『グシャ〜』オレの頭をまたグシャグシャニした。 「わぁぁ!!」 オレがびっくりして、頭を抑えてる間に社が走り出す。 「あはは、進藤!すごい頭やなぁ〜洒落とるで〜!」 そう楽しそうに言う社をオレは追いかける。 「まて〜社!オマエのもやってやる〜!!」 オレは、ちょっとしんみりした気分を忘れて、社を追いかけた。 社を追っかけながらそんな事を思って、オレは走った。 だけど…夜分に、ご近所の方の迷惑をかけるほどの声を上げながら、散々走り回って、立ち止まった社を捕まえて、ようやくトンガリ頭をクシャクシャにしたところで気づいた。 「オマエ…、塔矢んちの方に走った?」 オレの質問に堂々と、答える社。 (うーん。今年も迷っちまった…。) 去年以上に怒れる塔矢アキラを頭に思い描いて、オレはひたすら今いる位置が塔矢家に近いことを願った。
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