★オレとアイツの子供の日。1★

空が青い。
緑が蒼い。
風が心地いい。

この感じ…この優しい季節の中で、オレは一つの別れを体験した。

この季節の匂いを感じると、オレの心は遠くに行っちまう…知らないうちに。

でも、そんな事誰にも気づかれないって思ってた…。
オレは、嘘をつくのが上手いから…


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「進藤、今年もよろしくな!」

白髪のヤンキー兄ちゃん…って感じの見た目は、去年とおんなじまんま。
社はまた、背が伸びたみたいだ。

(ムカつく〜!)

オレだって伸びたのにさ。

去年と同じく北斗杯代表として合宿を行う為、塔矢家に向かう電車の中、オレは窓に写る自分の姿を見た。

去年よりは背が伸びた。(でも、社も伸びてるから差は縮まってない気がする…)
去年より、段位があがった。(高段者との手合いが増えた…けど、塔矢のヤツも段位が上がってるから、まだ追いつけてない)
去年より…。

オレは何が変わったんだろう?


塔矢の家の最寄り駅で降りて、オレと社は夜道を歩いた。
社が最近の近況を話してくれる。
学校のこと。
関西棋院のこと。
北斗杯の予選のこと。

北斗杯のメンバーは、相変わらず選抜戦免除の塔矢と予選で一抜けしたオレと…同じく一抜けした社という、去年と同じメンツがそろった。
その事は嬉しい。
また、皆で戦えるのは。
でも、この感じ。
デジャブにも似た、この感じ。
生暖かい中に冷たい風が混じって…オレの髪を揺らすたんびに、オレの心臓は、ギュとつかまれたようになる。


オレが、相槌をうちながらも考え事をしていたことに社も気づいたらしい。

「進藤…どうしたん?」

大雑把なようで、結構鋭いヤツだったりするんだよな、社は。
だから、プライベートでも結構連絡取ったりしてるんだけど。

「わりぃ…なんか、久しぶりに3人で打つしさ」

オレがそういうと、社はオレが3人で徹碁をする事が楽しみで興奮しているのだと思ったらしく

「ホンマ、久しぶりや!メチャクチャ楽しみや!!」

ニカッと笑う、社は本当に楽しそうで…。

(社、ごめんな…)

オレは心配してくれてる社に、ごまかしの嘘をついた事を心の中で謝った。

 

◆2◆