★除夜の鐘が響く頃4★


二人が夢中になって目隠し碁を打っていると、周りから知らぬ間に、カウントダウンが始まる。

「3・2・1」

「明けましておめでとう!!」

その声にハッとして、二人は顔を見合わせ一斉に笑う。

「明けましておめでとう!」
「おめでと〜!今年もよろしくな!!」

顔を見合わせて笑う二人に、周囲の知らない人までも

「おめでと!」
「明けましておめでとう!!」
と握手を求めてくる。

年明けに、その場自体が浮き立った空気に包まれて…除夜の鐘が鳴り響く。

「除夜の鐘の鳴る間に願い事すんだったよな?」
「そうだっけ?」
「まっ、そういう事にして願い事しとこーぜ!」
「はは、いい加減だな」
「いいじゃん。塔矢は何願うの?」
「えっ?」

好奇心満々、という表情で見上げるヒカルに…

(この時がいつまでも続きますように…)

アキラは、そう願う。

「教えないよ」
「なんだよ!ケチ!!タイトルください、とか?」
「タイトルは自分で取るものだろ。神頼みになんてしないよ。」
そっけなく答えるアキラに、口を尖らせて
「ケチ!!」
とヒカルが見上げるので

「じゃぁ、君はなんてお願いするんだい?」
そう聞くと、ヒカルはちょっと寂しそうに目を伏せる。

(オレの本当に叶えたい願い…は神様に届くかな?)

「進藤…?」
急に黙り込んだヒカルを心配そうに見つめるアキラの視線に気付いて、ヒカルは元気よく顔をあげる。

「神の一手が極められますように!!かな?」

(お前と一緒にな。)

心の中で付けたしをして、ニカッと笑えば…アキラが、まじめ腐った顔をして

「今年の願い事…にはならないんじゃないか?」
と呟いているので、
「うるせ〜!失礼なヤツだな!!いいんだよ!!!」

と怒鳴ってやった。

いつかは叶える夢なのだ。
大好きな、彼が夢見ていた夢を自分が引き継いだのだ。

(きっと叶えるさ、佐為!)

(そしたら、お前に会えるかな?)

ヒカルは除夜の鐘が鳴り響くなか、心の中で美しい囲碁幽霊に話しかけるのであった。


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それから、また少しずつ人混みが進行し、やっとの思い出、神社の前でお参りをすます。

人混みが少し緩和された、神社のはずれまで歩いてくると

「すごかったなぁ…、なんか、お賽銭箱じゃなかったモンな。」

と、先ほどみた神社の様子を興奮したように語るヒカル。

「確かに…、あんな幕が張ってあるとは思わなかったよ。」

アキラも、毎年ニュースでやっている光景が実際は思った以上に圧巻だったことに感想を溢す。

「そういえば、よくお賽銭がコートのフードに入ってるとか言うじゃん。お前のフードに入ってねぇの?」

そういうと、ヒカルは無理やりアキラのコートのフードを覗く。

「ちょっ…進藤!」

後ろに引っ張られるようなカッコウになって、アキラは抗議の声を上げる。

「ちぇ〜。ねぇや…」

本当に残念そうに呟くと、ようやくアキラのフードから手を離すヒカル。

「当たり前だろう。入ってたって、神社に返すものなんだから、がっかりするのは可笑しいだろう?」

たしなめるように言うと、

「ちぇ〜」

と、そっぽを向いてしまうヒカル。
すると、急に目を輝かして

「塔矢!あれ、喰お!」
といって、駆け出すその先には、お好み焼きの屋台や甘酒の振る舞いなどがやっており…。

寒空の下、長時間立っていたため、自分も少しお腹が空いてきたな…とヒカルの背をおうと、早くも目的のものを手にしたヒカルがアキラのもとに走ってきた。

「ほらっ!」
熱々の2つのお好み焼きをアキラに持たせると、次は甘酒に走るヒカル。
その様子を離れたところから見つめているアキラに、甘酒を1つ手に入れたヒカルが戻ってくる。

「オレ、甘酒ってそんなに得意じゃないから一つだけにした〜」
そういいながら、既に口をつけ始めている。

「くぅ〜、暖まる!!な、塔矢、甘酒大丈夫か?」
「ああ、大丈夫だよ。」

そうアキラが答えると、ヒカルは自分が飲んでいた甘酒をアキラに差し出す。

「じゃ、ほら!寒いから上手いぜ!!」

お好み焼き2個で手のふさがっているアキラに、差し出した甘酒をそのまま飲ませようとするヒカル。
その格好に、またしても、疑問を感じながら甘酒に口をつけるアキラ。

甘くて暖かい液体が喉を通る。

「本当だ。おいしい。」
「な?」

アキラの感想に、まるで自分が作ったかのような満足げな表情をみせるヒカル。
その顔に、アキラも嬉しくなる。


「じゃ、お好み焼きも喰お〜ぜ」

そういうと、仮設でつくられた休憩コーナーのなかでも、ドラム缶に炊かれた焚き火に近いところを陣取ると、お好み焼きに喰らいつくヒカル。

「進藤、お金。先に払うよ。」

そういって、アキラがポケットに手を伸ばすと夢中になってお好み焼きを食べていたヒカルが、顔をあげる。

「バカ!それはオレからの誕生日プレゼント!今日は、その為に来たんだろうが!!」

いいから、喰え喰え!!とアキラの前にもう一つのお好み焼きを無理やり差し出すと、また自分のお好み焼きに没頭するヒカル。

滅多に夜食など食べないアキラである。

(こんな事をするのも初めてだな…)

今日沢山あった初めてのことに、喜びをかみ締めてお好み焼きに口をつける。

 

◆5◆