★除夜の鐘が響く頃4★
「3・2・1」 「明けましておめでとう!!」 その声にハッとして、二人は顔を見合わせ一斉に笑う。 「明けましておめでとう!」 顔を見合わせて笑う二人に、周囲の知らない人までも 「おめでと!」 年明けに、その場自体が浮き立った空気に包まれて…除夜の鐘が鳴り響く。 「除夜の鐘の鳴る間に願い事すんだったよな?」 好奇心満々、という表情で見上げるヒカルに… (この時がいつまでも続きますように…) アキラは、そう願う。 「教えないよ」 「じゃぁ、君はなんてお願いするんだい?」 (オレの本当に叶えたい願い…は神様に届くかな?) 「進藤…?」 「神の一手が極められますように!!かな?」 (お前と一緒にな。) 心の中で付けたしをして、ニカッと笑えば…アキラが、まじめ腐った顔をして 「今年の願い事…にはならないんじゃないか?」 と怒鳴ってやった。 いつかは叶える夢なのだ。 (きっと叶えるさ、佐為!) (そしたら、お前に会えるかな?) ヒカルは除夜の鐘が鳴り響くなか、心の中で美しい囲碁幽霊に話しかけるのであった。
それから、また少しずつ人混みが進行し、やっとの思い出、神社の前でお参りをすます。 人混みが少し緩和された、神社のはずれまで歩いてくると 「すごかったなぁ…、なんか、お賽銭箱じゃなかったモンな。」 と、先ほどみた神社の様子を興奮したように語るヒカル。 「確かに…、あんな幕が張ってあるとは思わなかったよ。」 アキラも、毎年ニュースでやっている光景が実際は思った以上に圧巻だったことに感想を溢す。 「そういえば、よくお賽銭がコートのフードに入ってるとか言うじゃん。お前のフードに入ってねぇの?」 そういうと、ヒカルは無理やりアキラのコートのフードを覗く。 「ちょっ…進藤!」 後ろに引っ張られるようなカッコウになって、アキラは抗議の声を上げる。 「ちぇ〜。ねぇや…」 本当に残念そうに呟くと、ようやくアキラのフードから手を離すヒカル。 「当たり前だろう。入ってたって、神社に返すものなんだから、がっかりするのは可笑しいだろう?」 たしなめるように言うと、 「ちぇ〜」 と、そっぽを向いてしまうヒカル。 「塔矢!あれ、喰お!」 寒空の下、長時間立っていたため、自分も少しお腹が空いてきたな…とヒカルの背をおうと、早くも目的のものを手にしたヒカルがアキラのもとに走ってきた。 「ほらっ!」 「オレ、甘酒ってそんなに得意じゃないから一つだけにした〜」 「くぅ〜、暖まる!!な、塔矢、甘酒大丈夫か?」 そうアキラが答えると、ヒカルは自分が飲んでいた甘酒をアキラに差し出す。 「じゃ、ほら!寒いから上手いぜ!!」 お好み焼き2個で手のふさがっているアキラに、差し出した甘酒をそのまま飲ませようとするヒカル。 甘くて暖かい液体が喉を通る。 「本当だ。おいしい。」 アキラの感想に、まるで自分が作ったかのような満足げな表情をみせるヒカル。
そういうと、仮設でつくられた休憩コーナーのなかでも、ドラム缶に炊かれた焚き火に近いところを陣取ると、お好み焼きに喰らいつくヒカル。 「進藤、お金。先に払うよ。」 そういって、アキラがポケットに手を伸ばすと夢中になってお好み焼きを食べていたヒカルが、顔をあげる。 「バカ!それはオレからの誕生日プレゼント!今日は、その為に来たんだろうが!!」 いいから、喰え喰え!!とアキラの前にもう一つのお好み焼きを無理やり差し出すと、また自分のお好み焼きに没頭するヒカル。 滅多に夜食など食べないアキラである。 (こんな事をするのも初めてだな…) 今日沢山あった初めてのことに、喜びをかみ締めてお好み焼きに口をつける。
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