★除夜の鐘が響く頃5★


お好み焼きも食べ、神社でおみくじをひいたりお守りを買ったり…とひとしきり楽しんで、神社を後にした二人。
帰りは降りたホームではない方から電車に乗らなければいけないので、駅までの道のりを並んで歩く。

暗闇を一緒に歩きながら、

(今日は僕が願っていた事が沢山かなってしまった…。)

『ヒカルと時間を気にせず碁を打っていたい』という願いも、先ほど目隠し碁ではあるがかなってしまった。
なんだか、ヒカルと一緒にいると、全て願いが叶う気すらする…。

(もう少し、一緒に居たい…)

アキラは、終わってしまう楽しい時間が寂しくて仕方なかった。
そんな風に、寂しさを感じる事など今まで一度もなかったアキラ。

(僕はどうかしてる…)

ヒカルの二色に分かれた頭を見ながら、苦笑いをするアキラ。

駅まであと少し…というところで、年越しから元旦まで一日中営業しているコーヒーショップの前を通る。
そこは、寒さに暖をとる人たちで溢れていて…。
その賑やかさが、益々アキラを寂しくさせた。

すると、ヒカルが立ち止まって、そのコーヒーショップをみつめる。

「どうしたんだい?」

動こうとしないヒカルに、アキラが顔を覗き込む。

「なぁ、ちょっと寄ってかね?」

覗き込まれて目があったアキラに、いたずらっ子のように笑いかけるヒカル。
その様子を、食べたりなかったのかと勘違いしたアキラが

「さっき、あんなに食べたのに、まだお腹が空いてるのかい?」

と、呆れたような声をだすと、

「ちげぇ〜よ!オレ、実はマグネット板持ってんだ。」

と、自分のダウンのポケットを叩く。

「な、年初めの一局。お前と打ちたい!!」

晴れやかな顔で自分に笑いかけるヒカルに、アキラは自分の心まで晴れるような気がして。

「そうだね、一局。僕も打ちたい!」
「年越しは、お前と目隠し碁で、年初めはお前とマグネット碁か〜」

可笑しそうに笑いながら、ヒカルがアキラに向き合う。

「改めて…今年もよろしくな!!塔矢!」

その言葉に、なにより嬉しい約束をもらったように思えたアキラも自然と優しい笑顔がこぼれる。

「こちらこそ!」

「今年はお前に、公式戦で勝ってやる!」
「それは、楽しみだね。でも、僕も負ける気はないよ?」

と、いつものように掛けあう二人。

(本当に…今年は勝ってやるぜ!見てろよ〜!!)
それが、今から楽しみで仕方ないと目を輝かせるヒカル。

(また次の年末も一緒に過ごせたらいいのに…)
まだまだ先の話に胸をときめかすアキラ。

(でもやっぱり、今年も沢山一緒に打てますように!)
改めて、ひっそりと、神社の神様にお願い事をする二人であった。


 

◆終わり◆