★除夜の鐘が響く頃3★
「進藤!」 「悪い!塔矢、待った?」 そういいながらも、彼の切りそろえられた前髪が風に揺れるのをみると、風の冷たい中待っていたのは大変な事だったろうと、ヒカルは心配になる。 「なぁ、お前…ちょっと薄着じゃね?寒くねぇの??」 アキラの格好は、ダウンにマフラー、帽子に手袋にイヤーマフといった防寒具の全てをそろえたヒカルとは違い、すっきりとしたもので、タートルネックにロングのコート。流石に手には手袋がはめられているが…。 「お前、それじゃ、これからスゲェー待つのに無理だろう?」 「無理なんかじゃない!君が気にしなくても、僕は大丈夫だ!!」
「これは、君が寒くないようにしたほうがいいよ。君は、いつも鼻をグジュグジュさせているじゃないか。風邪を引きやすいんじゃないか?」 お説教でもしようとしそうなアキラを遮ると、ヒカルは彼に押し付けていたマフラーを首…というより、口元に巻いてやって黙らせる。 「これでよし!そっちは、自分でな!!」 鼻を赤くして、ニカッと笑うヒカルにアキラは黙って黄色のイヤーマフをつけるのだった。
「これは…すごいな」 二人は、圧倒されながらもはぐれない様に、ピッタリと寄り添いながら、徐々に進む人並みに乗っていく。 アキラは、ヒカルと触れ合う腕から、彼の温もりを感じて身体が熱くなるのを感じた。 (さっき、彼を一人で待っていたときはあんなに寒かったのに…) ヒカルと会った途端、そんな寒さを忘れてしまった。 彼に借りたマフラーが熱い…。 (そういえば、さっき彼もこのマフラーをしていたんだ…) ヒカルの香りがしそうな気がして、鼻をマフラーにうずめる。 「塔矢、寒いの?」 と、心配そうに見上げてくる。 「じゃ、こうしてよ!?」 「し…進藤!」 「なんだよ?」 身をはがそうにも、周りは人だらけ。 「バカ!お前が風邪引くよりマシだろ?こんだけ、混んでんだから、だれも気にしねぇって!!」 (あと少し近づいただけで…キスしてしまいそうだ…) そう思って、急に顔が熱くなるアキラ。 「ともかく、大丈夫だから!」 先ほどよりも顔同士の接近から免れたアキラは、そっとヒカルの顔を盗み見る。 胸がドキドキしているのが、自分の胸に寄りかかっているヒカルに分かってしまわないか気が気でない。 ともかく、どうでもいい事を考えて自分の思考から、ヒカルを追い出す事に専念するアキラであった。 どのくらい、そうしていただろうか…。 「なぁ、暇じゃね?」 ヒカルが、胸にもたれ掛かったままアキラに話しかける。 「ん…、ああ…そうかな?」 アキラがホッとして、その申し出に答えると、ヒカルが可笑しそうに笑う。 「何?」 そのヒカルの素直な言葉に、胸を高鳴らせながらアキラは平静を装う。 「じゃぁ、僕からいくよ?」
|