★除夜の鐘が響く頃1★
寒さだけでなく、胸がドキドキする。 (これから、塔矢と初詣だ〜。なんか、すげぇ〜楽しみ!!)
(一度行ってみたかったんだよなぁ〜、明治神宮の初詣!!) 毎年、ニュースでも話題になるほどの殺人的な混み方と噂の高い、明治神宮。
自分もプロとして生活を始めた。 あれは、暮れに差し掛かる前のアキラの誕生日。 アキラの父である塔矢元名人とその妻・明子も中国から帰ってきており、ヒカルにとっては最初居心地の悪いものになるのでは…と思って気が引けたし、佐為のことを行洋に聞かれるかと思って身構えていたが、特にそういう話題も上らず、和気藹々としたホームパーティーにヒカルも楽しい時間を過ごしたのだ。
ということで、残るべきは我が身のみ。 (こうなりゃ、身体で払うしかねぇ!) ありがた迷惑…という言葉を思いもしないヒカルであった。 そんなこんなで、翌日棋院で対局の終わったアキラと待ち合わせをしていたヒカルは、アキラの碁会所に向かう道を一緒に歩くアキラに話しかける。
(オレ…プロになって…塔矢に近づけたと思ったけど…全然、コイツの事しらないんだよなぁ〜) 誕生日だって、もし緒方に会わなけば知る事もなく、興味を持つ事もなく過ぎ去ってしまったにちがいない…。 そう思うと、益々アキラに何かを挙げたくなって体がウズウズしてきたヒカル。 「なぁ、塔矢!お前、なんかしてみたい事ないの?!オレができる事だったら、手伝うし!!」 目をキラキラさせて、自分に話しかけるヒカル。 そんな彼をみて、アキラは「子供だな…」と思う半面、その素直な明るさが羨ましくもあり好ましくもあり。 アキラは最近、彼のよく動く瞳をみていると、胸が温かくなってくるのを感じていた。 「君に手伝ってもらってできる事なら、僕には出来てるよ。」 そんな、意地悪な言葉だが、鈍いヒカルは普通に受け流す。 「なんだよ、それ!まぁ、そうだろうけど…なんか、ないのかよ?」 まったく、食い下がらないヒカルに 「じゃぁ、君は何がしてみたいの?」 と逆に質問をする。 「オレはね〜、明治神宮で除夜の鐘きいてお参りしてみたい!」 突拍子のない答えに、不思議そうな顔をしていたらしいアキラに、ヒカルが目をキラキラさせて力説する。 「だってさ〜もうすぐ正月じゃん!明治神宮ってすごいんだって!正月になると、人が!!」 自分は、したい事など囲碁関係の事ばかりで、ヒカルのようにすぐには「したい事」を挙げる事ができない。 そんな彼に気付かずにヒカルは、 すっかり、自分の考えに夢中になっているヒカルをみていたら… (進藤と二人で、お参り…楽しいんだろうか) 考えた事のない思いに戸惑いながらも、どうしてもやってみたいという気持ちが大きくなってきて 「どうしたんだよ?」 突然のアキラの申し出にキョトンとしてるヒカルに、自分のいった事が急に恥ずかしくなってしまい 「いや…ちょっと思いついただけだから…」 気にするな…と続けようとして、 「行こうぜ!」 ヒカルが強い瞳を自分に向けているのが心地よい。 「ぜぇ〜ったい!絶対行こうぜ!!」 「ゼッテェ面白いって!!」ともう31日になったかのように浮かれるヒカルがまぶしくて…。 アキラが目を細めてヒカルを見つめていると、ちょっとバツが悪そうな顔をしたヒカルが悪戯っ子のような顔で、アキラをみる。
そうして、二人は31日の除夜の鐘に間に合うように待ち合わせをする事になった。
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