★ホワイトデーdeセレナーデ7★

イベント会場では、ヒカルが寝込んでしまったアキラのことを考えてため息をついていた。

(アイツ、マジでぐったりしてたけど大丈夫かな?)

おそらく自業自得であろうアキラの腹痛にヒカルは、ちょっと罪悪感を感じていた。
今朝、至ってピンピンしていた葦原に昨日の顛末を聞いたのだ。

「それにしたって、進藤君も考えすぎだよ〜。アキラがこんなイベントに来たがるわけ無いじゃん!」
「え?ああ、まぁ…。で、勝負はどうだったの?」
「負けたけどさ、別にアキラにはコーヒー奢らされただけ!!」
「オレの言った通りにしてくれたんだよね?」
「ん?まあな。アキラが見てないうちにコーヒーはとりかえたけどさぁ。」


わざわざ、電話までしてきて、アキラと会ったら「こうして!!」と頼んできたヒカルに、葦原は…

「でも、なんでこの間電話で、”今日のイベントに行きたいって事を話せ”とか”アキラから差し出されたもの、特に食べ物には絶対手を出すな”とか言ってたの?あれ、アキラとの勝負の前だったから、すごいびっくりしたんだよ〜」

と、至って暢気だった。

(今、アイツは腹痛で倒れてるんだよ!?それって、どういう事か分かんないのかなぁ〜)

ヒカルは、問いかけの答えの代わりに、乾いた笑いをするしかなかった。

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お昼も過ぎると、大分腹痛も治まってきたアキラは、ぼんやりと恋人の事を考えていた。

(進藤…会いたいなぁ)

新しい携帯を握り締めて、

(こんな事なら、一緒に携帯を買ってくるんだった。)

でも、無理やりに彼にTV電話のついた携帯を渡すのは、彼の自由を奪うようで嫌だったから…、一言話してからプレゼントするつもりだったのだ。

(今キミの顔がみたいよ…)

ぬれてしまった携帯の中には、ヒカルが眠っているときにこっそり撮った写真や、照れるヒカルを不意打ちしてとったムービーなどが沢山入っていた。
データーとして、パソコンに移動はしていたが、手元ですぐ写真が見れないのは、つらい。
それに、毎日少しずつ増やしていた写真の一部は、まだ保存できてなかったものもあったので、どうしても悔やまれるのだった。

人知れず、ため息をつくと、持っていた携帯が震える。

(?)

着信履歴をみると

(葦原さん…?)

あんなに楽しみにしていたイベントの最中に、何の用だろうか?と電話に出ようとすると、TV電話を受信しているというボタンが光っている。機械を購入したときに散々説明を受けていたため、アキラはTV電話ボタンを押すと…

『塔矢?』
「進藤!!」

今まさに会いたいと思っていた、進藤ヒカルの愛しい顔が液晶に映し出される。

『大丈夫か?具合…』

心配そうな声に、アキラは嬉しくなる。

(進藤が、僕を心配してくれている。)

先ほどまでの心細さなど、吹っ飛んでしまったようだったが…そこはしおらしく…

「大分よくなったよ。心配かけたね。」

そう言って弱弱しく微笑めば、少し口を尖らせるように

『別に心配ってゆーか…』

そんな風にいいどもりながらも、小さな画面に移る瞳には心配そうな様子がありありと取れて…思わず笑みがこぼれるアキラだった。

「どうしたの?キミの携帯は?」
『ん?あるけど…葦原さんが、お前と一緒の携帯だって言ってたから。』
「そうみたいだね。」
『オレの、TV電話じゃねーし…借りたんだ。』
「僕の顔が見たかった?」
『ば〜か、お前がオレの顔見たいんじゃないかって思ったんだよ!』
「そうだね、丁度キミの事を考えていたよ?」
『へ?』
「だから、嬉しい。」
『バカ…』
やり返したつもりが、素直に喜ばれてしまって…液晶でも分かるくらい赤くなるヒカルに、アキラは胸が熱くなる。

(本当は一緒に過ごしたかったけれど…こうやって、キミが僕のことを考えてくれているのがわかるから…)

今日はおとなしくしているよ…と、心の中で、つぶやくアキラだった。


◆8◆