★ホワイトデーdeセレナーデ8★

それから、しばらく他愛の無い話をしていた二人だったが、ヒカルが押し寄せる女性陣に見つかったらしく、二人だけの通信は無理やりヒカルの手で終わらされた。
また、一人っきりの空間に急に戻ってきたアキラは、寂しさに再度襲われる。

(僕が元気なら、進藤に寄り付くものは誰だろうと、寄せ付けはしないのに!!)

大分収まったとはいえ、まだ動くとつらい下半身ではイベント会場に乗り付けるわけにも行かず…、悔しさに涙をにじませながら目を閉じるアキラだった。

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(?僕は寝てしまったのか…?)

アキラが次に目を開けたとき、明るかった部屋はすっかり日が落ちてしまい暗闇が広がっている。

(あれ…?暖かい…)

目が慣れるまでじっと目を凝らしながら、暖かい何か…自分を抱きしめる物体を手探りで触る。

「ん、起きた?」

「え?」

目がなれる前に、聞こえてきた少し高めの声は、間違うことなく…

「進藤?」

かすれた声で、つぶやいて急いでサイドテーブルのライトに手を伸ばす。

と、見慣れた金髪が目の前に広がった。

「大丈夫か?」

目をこすりながら、自分を見上げてくるということは一緒になって彼も眠っていたのだろう。

「どうしたの?」

アキラは信じられないものを見る気持ちでヒカルを見つめた。
ヒカルは、一度長期無断欠席をして以来、どんな仕事にもとても真摯だ。
見かけによらず…と言われながらも、遅刻(ギリギリに行く事はしょっちゅうだが。)も欠席もしないし、ましてや一度参加した仕事を途中で投げ出してくるようなことはした事がない。
ヒカルが碁に対して、向き合う姿勢を変えた…その表れであるのだが…。
アキラが、黙ってヒカルを見つめていると、ヒカルはアキラの胸に頭を落とすと

「だって、お前辛そうだったから。」

ヒカルのかぎ慣れないシャンプーの香りを嗅ぎ取りながら、

「だけど、仕事…」
「一度、風呂とかまで入ったんだけど…やっぱ、帰ってきた。」

なんか、オレがいると邪魔っぽかったし。と、ヒカルは笑ってその日の会場の話をする。

急遽、変更になったヒカルの参加は、イベント会場を予想以上に混乱に陥れた。
当日になり、イベントの舞台に現れたヒカルに、女性陣は沸き立ち他の棋士そっちのけで群がった。
当然、他の棋士…特に中堅どころは面白くない。
イベントを主催した事務局側も、内心ヒヤヒヤし始めただけに、ヒカルが最終の電車で帰りたいと告げた時に、逆にホッとされたのだった。

「明日、いい感じに盛りあがんじゃね?」
「でも、ファンの女性たちは可愛そうだったね?」
思っても居ないことを口にするアキラだったが、ヒカルは気づかず

「ん〜、でも案外、居なきゃ居ないで、どうってこと無いと思うけどなぁ」

そう言いながら、アキラの顔を覗き込む。

「誰かさんと違って、さ。」

そのいたずらっぽい顔に、アキラもやっとヒカルが傍に居る実感がわいてきて

「そうだね。僕は、キミが居なきゃ駄目だ。」
「仕方ないヤツ!」

そう言いながら、クスクスと楽しそうに笑うヒカルを抱きしめる。

「もう、腹いいの?」

優しくお腹をなぜてくるヒカルの手に、アキラは急に下半身がジワリと熱くなるのを感じる。


「進藤。」

そう言いながら、ヒカルに顔を寄せる。

『チュッ』と、音を立てながらキスをして顔を離すと、

「もう、変な作戦たてるなよ?」

笑いを含んだ薄い色の瞳に出会う。

(やっぱり…キミの入れ知恵か…)

あの鈍い葦原が自分の誘導にかすりもしなかったことが不思議で仕方なかったアキラだが、その言葉にストンと答えが入ってくる。
あっさり、自分の手を読まれていたのは悔しいが、ヒカルが自分のことを考えていたことは嬉しくもあり…。

「キミが傍にいてくれるなら…ね?」

といって、もう一度キスをすると、腹痛が全快したことを一晩かけてヒカルに伝えたのだった。

おわり

 

 

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プライベートでも、相手の手を読みあう二人…。
なんかアキラさんがとことん情けない感じになってしまってすみません…。へへ。
いつまでもお幸せに♪なんつって。