★ホワイトデーdeセレナーデ4★

「葦原さん、もし僕が勝ったら、僕のお願い聞いてもらえませんか?」
「ははは、アキラのお願いか〜。なんか、怖いなぁ。」
「ははは。嫌だな、葦原さんったら、そんな大したものじゃありませんよ?」

表面的ににこやかなムードで交わされる会話だったが、何か白々しい。
碁会所のアイドルである若先生と、よき指導者(?)として親しまれている葦原の対局を見ようと集まってきた客たちは、順序よく進んでいく盤を見つめながら、なにか疑問を持たずにはいられなかった。

お互いにニコニコしている、二人のプロ棋士に、ついに溜まりかねた客の一人が

「で、若先生のお願いってなんなんですか?」

そういって、質問すればアキラはにこやかに、

「それは、勝負がつくまで秘密ですよ。」

と、いたって余裕だ。

「その代わり、僕がまけたら葦原さんが欲しがっていたiポット?でしたっけ??」
「買ってくれるのか??」
「はい、いいですよ?」

そういいながら、痛烈な場所に一手を決めて「葦原さんが勝ったら…ですけど、ね。」と微笑む。

それに顔をしかめながら、

「だけど、あれだぞ!今度の14日のイベントを代わってれ、とかは駄目だぞ!!」

念を押してきた葦原に、今度はアキラが驚かされる。


「!!!」
「はは、まぁ、アキラに限ってそんなチャチなお願いはしないか?」
「!!」

(やられた!)

この勝負を始める前から、葦原の様子は何だかおかしかったのだ。
それは、さっき電話がかかって来る前までには無かったもので…。

(もしかして…)

嫌な予感を隠しながら、無理やり笑顔を作る。
計画は、もちろんひとつだけではないのだ。次の計画に移る前に警戒されては元も子も無い。

「ははは、嫌だな。そんな、お願いはしませんよ?でも、葦原さんは、そんなにそのイベントに行きたいんですか?」
「当たり前だろ?こっちは出会いが少なくって悩んでるのに、こんなおいしいイベントはないんだぞ!!」
ホワイトデーに、自分に好意をもってくれてるお嬢さん方とイベントだぞ!?これが、おいしくなくて、何がおいしいんだ??と、目の前で熱く語る葦原に、客たちからも苦笑いが出る。

「でも、折角冴木君が休んでくれるから、俺の注目度があがると思ったのになぁ〜」

進藤君が、来るんだもんなぁ〜。とため息混じりに葦原がはいた一言が、アキラに火をつける。

(そう、そんなイベントに進藤を一人行かせたら…)

アキラは、ホワイトデーにヒカルと離れ離れになることだけではなく、ヒカルが不特定多数の女性たちに囲まれてしまうのではないか…それが心配なのであった。


(やっぱり、どうしても譲れない!!)

アキラの中に、先ほどまで残っていた兄弟子への配慮は、塵ほども残っていなかった…。

 

◆5◆