★キミと僕とのひな祭り。5★ 「あっ、塔矢〜。オレいいもん、もらっちゃった!」 居間に足を踏み入れると、とても嬉しそうな進藤が僕に最高の笑顔を見せてくれた。 「オマエ、ちっちゃい頃ホント可愛かったんだなぁ〜。ホントに女の子より可愛いじゃん!!」 進藤が、手にしているのは僕の小さな頃の写真。 僕が進藤に一番見られたくなかった写真。 「なーなー、オレ気づいたんだけどさ〜、おばさんの雛人形にそっくりなのな!!」 そう、僕がそれよりも見られたくなかったのは母のひな壇にある雛人形。 母はこの時期になると、ひな壇を出しては、僕の幼かった頃の写真を眺めるのが好きなのだ…。 でも…。 (進藤にまで、その写真を見せる事はないでしょう!!お母さん!!!) 僕は、初めて感じる母への憤りに、拳を振るわせた。
楽しそうに僕の写真を、見ながら母と進藤はまだまだ盛り上がっている。 僕がとうとう、耐え切れなくなって 「いい加減にしてください!こんな写真進藤に見せて!!進藤、キミもキミだ!!!」 そういって、進藤から写真を取り上げようとした。 母も、僕が大声を出した事に驚いた顔で僕を見つめていた。 「アキラ、まあ…お前も座りなさい。」 と、呟いた。
「いえ、僕はこれから進藤の家に行きます!」 僕が、はっきり断言すると、 「キミが、その写真を返さないというのなら、僕もそれに値する写真をキミのお母さんから頂く事にするよ。」 「ちょっと、待てよ!!塔矢〜」
両親そろって旅行に行ってしまった為、進藤家は今、誰もいないのだ。 「進藤君…追いかけなくていいのかね?」 「そ…そうですね。急ぎます!おばさん、ごめんね」 同じく、ボーとしていた明子もハッとしたように、ヒカルに笑顔を向ける。 「進藤さん…ごめんなさいね。アキラさんの事よろしくね。」 ヒカルは乾いた笑いを残して、塔矢家を後にした。
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