★キミと僕とのひな祭り。3★


彼を待っていた間、僕の悲しい考えは止まらなかった。
だから、僕とした事が、彼が目の前まで来ている事にも気づかずにいたらしい。

「塔矢!」

ちょっと、強めに身体を揺らされてようやく彼が来ている事に気づいた僕は、暗いを振り払って無理やり笑う。

「進藤…」

自然に笑ったつもりでも、やはり進藤は変なところで鋭い。

「塔矢…なんか、具合が悪そうだぜ?」

心配そうに、僕を覗き込む彼が嬉しい。

「大丈夫だよ。ちょっと、冷えただけだから…。」

そう言って今度こそ、ちゃんと笑うと彼が僕の額に手を当ててきた。

「スゲェー冷たい…。ごめんな、オレが遅れたから…。」
「いや、僕が早く来ただけだから…。」

今日は10分くらいしか彼も遅れてはいないから、そういっても差し支えはないだろう…。

「オマエ今日携帯もってねーの?」
「え?持ってるけど。」
「オレ、遅れるから、他のところで待っててもらおうと思って連絡したんだけど…。」
「エッ!ごめん。」
どうやら、僕は自分の考えに夢中で、バイブレーターにしていた携帯が震えているのに、全く気づかなかったようだ。
急いで着信をみると、彼の番号…の前に、家からの通知。

「?」
何か起こったのだろうか…と思っていると、

「オレ、繋がんないから、オマエん家に電話したんだぜ。」
「えっ!そうなの?」

そして、彼は僕の目の前を歩き出した。

「進藤、碁会所はそっちじゃないけど?」

僕は、彼が進む方向に嫌な予感を感じながら彼の腕をひく。

「?何言ってんだよ。オマエん家に行くんだから、こっちだろ?」
「家!」
「だって、おばさんが家で打ってくれって言ってたぜ?」
「……。」

僕は自分のうかつさを呪いながら、思わず俯いた。

 

◆4◆

アキラさんにとって長い一日のスタートです。