★キミと僕とのひな祭り。2★


母と一緒に、ひな壇を飾り終わり、僕はでかける準備をしていた。
今日は、彼と一緒に打つ約束をしている。

(きっと、遅れてくるんだろうなぁ…)

少し時間にルーズな恋人を思って苦笑いをしながら、僕はコートを羽織る。
3月だというのに、未だ雪が降るほど寒い日が続いている。

絶対遅くなる彼を待つ自分が好きだ。
これから来るのが彼だと思うと、待っている間にドキドキしてどんな寒さも忘れられるから。

そして、遅れてきた彼の頬に僕の冷えた手を添えれば、彼は驚いて僕の手を温めてくれる。

普段なら、恥ずかしがり屋の彼は人目を気にして絶対に手など掴んでくれないのに…。


彼は知らない。
僕がどんなに打算的で、いつもどんなに彼の気を引くようにだけ行動しているか…。


僕が居間でお茶を飲みながら雛人形を見ている母に、

「お母さん、ちょっと出かけてきます。」
「あら、アキラさんお仕事?」
「いえ、進藤と打つ約束をしているので…。」

僕が「しまった」と思っていると、母はパッと顔を明るくして、

「まぁ、進藤さんと?だったら家で打ってもらったら?お父さんも喜ぶわよ。」

期待に目を輝かせる母に、僕は内心苦い想いを隠しながら…

「でも、進藤の予定もありますし…一応聞いてみますが…」

そう、語尾をにごらせながら僕は家を後にした。


いつもなら、僕だって彼を家に呼んで打つほうが好きだ。
だが、今の季節は別だ。

アレが出ている季節は、絶対に彼には家に来て欲しくない。

(もし進藤がアレをみたら…)

僕の苦い思い出がよみがえり、それだけは絶対阻止しなければ…と心に決める。
それに、今朝話した母との会話も、心配の要因だ。

(結婚だ、孫だ…なんて、話を聞いたら進藤は…。)

「別れよう」なんて、言ってくるんじゃないか…そう思うと、悲しくて仕方なかった。
彼が、意外に子供が好きなことも知っている。
それに変なところで、思いやりがあるから…。

自分との不安定な関係より、彼は家庭を選んでしまうんじゃないか…。
親達の事を考えて、僕との関係を終らせたがるのではないか…。

掴んだ手を離す気はないが、向こうから離されてしまったら…。


僕は、浮き立っていた先程までの気持ちが、しぼむ様に俯いて彼との待ち合わせに向かった。

 

◆3◆

好きすぎて、キミのなにもかもに不安を覚えます…みたいな。