★キミと僕とのひな祭り。1★


僕は3月になると憂鬱になる。
理由は唯一つ。ひな祭りだ。
本来なら、男である僕には、関係のないはずのイベントのはずなのに…。
なのに…。


「アキラさん、ちょっとコレ手伝ってくださる?」

僕は母に呼ばれて、気づかれないようにため息をついた。

(ああ、今年もアレの時期か…)

「お母さん、今年も出すんですか?」

僕が今に行くと、既にそこには小さな箱が沢山並んでいて…、今の一番奥には赤い布のかかったひな壇がドンっと備えてあった。

「アキラさんは、ひな壇嫌いなのね…。」

僕の言い方がまずかったのか…母が、手に持った雛人形を見つめながら言う。
その姿がなんとも悲しげで…。


「そういう訳ではありません!ただ…、一人でここまで出すのは大変だったでしょうから。」

そういいながら、僕は居間に入り、小さな箱を開け始める。
僕が黙々と手伝い始めると、母は嬉しそうに

「ふふ、アキラさんもすっかり手馴れちゃったわね!これなら、いつ娘が出来ても大丈夫ね!」

そんなことを言うので、うっかり僕は人形を落としそうになってしまった。

「…僕は、まだ十代ですが…。」

「例えばの話よ!」

そう言いながらも「アキラさんのお嫁さんになる人はどんな人かしらね〜♪」と母はニコニコしている。


その顔を見ていて、僕は胸が締め付けられそうになる。

(ごめんなさい…そんな日は、一生来ないんです…。)

だって、僕には好きな人がいるから。
たった一人の運命の人。
何年も思い続けて、もう僕の手には入らないかもしれないと…何度も悲嘆にくれたかもしれない…のに。
やっと、僕は彼の手を掴む事ができた。
そう…彼。
進藤ヒカルは、僕のライバルだ。
いつからか…もう忘れてしまうくらいに、ずっと彼が好きで…彼が他の人と付き合っても諦められなくて…やっと彼の心の…身体の…一部であっても捕らえる事ができたのだ。

(だから、僕はもう一生彼を離す事が出来ないんです。)


母が、娘を欲しがっていた事は知っていたし、だからこそ自分はひな祭りが嫌いなのだ。
その母に、娘も孫も見せる事が出来ない…。

(でも、例え誰を傷つけても、誰を泣かせても…僕には進藤だけなんです。)

アキラは、罪悪感を感じながらも、黙々とひな壇を飾り付けていった。

 

◆2◆

なんとなく、重い始まりです。