★キミと僕とのひな祭り。7★

 

僕が、彼女の後をついてきたわけは一つだけ。
進藤の事をもっと知りたかったから。

彼女の名前を聞いたとき、僕はすぐに気がついた。
藤崎あかりという人物が、進藤の幼馴染だと言う事に。
僕にとっては、苦い思い出と共にその名前は、いつも進藤の口から発せられたから。

『今日は、あかりの学校に指導碁にいくから』
『わりぃ、オレ今日はあかりん家によるって約束しちまったんだ』

などなど…。
僕と進藤との時間を引き裂く、その名前。
進藤が彼女に対して、異性として思っていないことは分かっている。
でも、彼女が進藤に対してどう思っているか分からないし…なにより、僕の知らない彼の時を知っている彼女に、僕は知らず知らずと嫉妬していたのかもしれない。

いつか、会ってみたい…そう思っていた。


だから、彼女に声をかけられたとき、僕の知らない進藤を、聞く機会だと思ったんだ。

「えっと、それで塔矢君は今日はどうしたの?」

僕が黙って、頂いたお茶をすすっていると、彼女が耐えられなくなったのか僕に声をかける。
僕は顔をあげると、お客様用の愛想笑いを浮かべて

「実は、今日は進藤のお母さんに用があったんです。棋院で、若手の特集が組まれることになって、幼い頃の写真も載せることになっているのだけれど、進藤がまだ持ってこないので僕がとりに行くように頼まれたんですけど…。」

もちろん、そんな事は嘘だ。
幼馴染の彼女なら、進藤の幼い頃の写真も持っているに違いない、そう思っていたら、スッと出てきた。

(本当に、自分で自分が恐いよ…)

僕は、心の中で自分に苦笑いをした。
そんな僕の思惑など知らない彼女は、僕に同情までしながら、

「本当にヒカルは!!アルバム持ってくるから!」

といって、部屋に向かってくれた。

(ヒカル…そんな風に自然に呼び合う事ができたなら…)

気軽に呼ばれあるその名前が、僕の心を落ち着かせなくする。
僕がまた、彼へと想いを飛ばしていると、彼女が戻ってきて分厚いアルバムを何冊か広げる。

「どう?よさそうなの…ある?」


よさそうなの…が、ないわけがない!!
というより、よさそうなのだらけ!!!だ。

(キミは…可愛すぎる…)

写真にうつっている進藤は、ソレはソレは可愛くて、まるで天使のようだった。

僕は、彼の横に移っている藤崎あかりも、今僕の目の前にいる藤崎あかりも目に入らない状態で、アルバムに食い入った。


それでも、彼女が時々「コレは遠足のとき〜」とか「コレは七夕で〜」とか、色々説明をしてくれるのだけは、しっかり耳に入っていたのだけど…。

 

 

◆8◆

今度は、一応人の話は聞いてる模様?