★キミと僕とのひな祭り。13★

「なっ!人が真剣に言っているのに…恥ずかしいとは…」

ふざけるな!!と続けようとして、声が出なくなった。
行き成り、僕の口がふさがれたからだ。

柔らかくて暖かい感触…。
どんな言葉よりも、僕を包んでくれる。

その感触が離れていくのを残念に思いながら、ほっ息をはく進藤の顔を追いかける。

「あっ」

進藤が、自分からのキスに気を許したところを、捕まえて今度は僕から彼に口付ける。

彼がしたような触れるだけのキスじゃない。火をつけられた身体は、そんなものじゃ収まらない。

(全部…全部、キミを頂戴…)

僕の全ても挙げるから…。

僕は喰らい尽くすように彼の口を口内を犯す。

「ん…塔…矢…」

進藤がうっとりして、僕の首に手を回してくれるのが嬉しい。
そのまま、彼を畳の上に横たえ、着ていた服に手をかけた瞬間…。


「アキラさん…入ってもいいかしら?」
「…お母さん!」
「えっ!!」

行き成りかかった母の声に、進藤が思いっきり身体を起して、
「グッ」

僕は、顎の下に、強烈な頭突きを喰らった。


頭を抑えてしゃがみ込んでる進藤と、顎を押さえてうずくまってる僕と…交互に見ながら母が

「お茶を持ってきたんだけれど…、仲直りはできたのかしら?」

と僕らの様子を可笑しそうにみている。
なんだか、からかわれている様にも見えなくはないが…確かに今の状況では、仲直り(実際はそれ以上のことをしようとしたんだけれど…)したようには見えないのかもしれないと思い…母に心配をかけていたことを改めて、僕は申し訳なく思った。

「ちょっと、進藤のマグネット碁の碁石が落ちてしまったから、それを拾っていて…ぶつかっただけだから。」

僕が、言い訳をすると進藤も、
「そうそう!おばさん、オレ達ケンカしてないから、安心して!!」

そういって、赤くなった額を押さえながら笑った。

母はそんな僕らを見ておかしそうに笑うと

「そう。それなら、いいんだけれど。全部拾ったら、降りてきてね。進藤さん、よかったら今日はお夕食、食べてらしてね。」
「えっ!悪いよ。」

進藤が、母に向かって手を振って断る。

「でも、今日はお一人なんでしょ?三人分も四人分も変わらないもの、一緒にひな祭りのお祝いをしていって?賑やかな方が楽しいわ。ねぇ、アキラさん?」

母はいつの間にか進藤の手をとると、僕に悪戯っぽい目を向けてくる。

僕は、進藤の手の上にある母の手が気に食わなくてムカムカしつつも、進藤にどうしても家に食事をして欲しくて無理やり笑顔を作る。

「そうだよ、進藤。一緒に食べていきなよ。食事まで一局打てるし。」

一局と聞いて、進藤の目の色が変わる。
結局彼も、僕と変わらず囲碁馬鹿なんだ。

「じゃ、お世話になります」

進藤が、そう母に言うのを聞いて僕はこっそり心の中でガッツポーズを決める。

(今日はこのまま、一局打って、夕食後は僕の部屋でキミとゆっくり過ごすんだ!)
僕が、散々だった一日を取り返すべく、計画を立てているとソレを遮るように、

「あ、アキラさん、お父さんが食事までさっきの検討を三人で出来ないかって言ってらしたわよ。」

(お父さん〜、昼間あんなに進藤と打ったというのに、まだ邪魔する気ですか??)

僕が、二度までも僕の邪魔をしようとする父に怒りを覚えて拳を振るさせていると、進藤が焦ったように僕を押しのけて

「あの、すぐ降りますって伝えてください。」
「進藤!!」
「いいだろ?オマエとは何時だって打てるんだから。」
「…」

僕と進藤のやり取りを、微笑んだまま見つめていた母は、お茶だけ僕の机に置くと、

「伝えておくわね。お菓子を食べたら降りていらしてね。」

そういって、下に降りていった。

 

 

◆14◆

 

次でラストです。