★キミと僕とのひな祭り。12★

僕は、すっと心に溜まっていた重石が取れたように軽くなって

「進藤!」

そういうと、彼を胸に抱きしめた。

「バッ!おい、コラ、調子のんな」

彼がそういいながら、バタバタ暴れるのを押さえ込んで

「ちょっとだけ…このまま!」

僕が、頼み込むと彼も、諦めたのか大人しくなった。


「キミと出会えなかった日々が悔しいよ…」
僕の知らないキミを、他の人が知っている事が…悔しい。
彼は、僕の背中に手を回して

「オレだって、ちっちゃい頃のオマエに会いたかったな」

顔の見えない彼の言葉は、真実を伝えてくれる。

「今日、オマエのちっちゃい頃の写真、すっげぇ可愛かった!でも、なんかちょっと寂しそうでさ…。」
「うん…。」
「すぐ側に行って、こうやってギュっってしてやりたくなった。」

彼は、そう言うと僕の背中に回した手に力を入れた。
進藤が、そんな風に僕を抱きしめてくれるなんて、初めてで…、僕は息の詰まるような感覚に、頭がしびれるほど酔った。

「僕…誰にも言えなかったけど、ひな祭り嫌いだったんだ…。」
「うん。」
「男なのに女の子の格好をさせられうことも、その写真を他の人が見ることも、人形が僕とにてるって言われることも…」
「ああ。」
「母の望みどおりに女の子でなかったことも…お嫁さんも孫娘も作ってあげれないことも」
「…」
「これから、その望みを叶えてあげれないことへの罪悪感も…」
「…オマエ」

そこまで言って僕は進藤の顔を覗き込む。
僕はその可能性を彼に気づかせたくないと思って、この話題から避けていた。
だけど…僕らが男である以上いつかは通る道だ。
その時に、僕は彼を絶対に選ぶ…そのことを彼に知って欲しかった。
そして、彼にも僕を選んで欲しかった。

「僕はとんでもなく親不孝かもしれない…し、すぐ突っ走ってキミに心配をかけるかもしれない…」
「…」
「キミと過ごした時間は短くて、僕はキミの特別にまだなりきれてないかもしれない。」
「…」
「キミに暖かい家庭を作ってあげる事も出来ないし、子供も生んであげれない…。」
「…」
「でも、僕はキミと一緒なら大嫌いなひな祭りも好きになれる。」
「…」
「僕は、僕と同じようにキミにとっての僕が特別でありたいと思うし、何年も何十年も…今まで一緒にいられなかった分もキミの隣にいたいんだ。」

僕は、溜まっていた想いを全てかれに伝えた。
本当は伝えたくて分かって欲しくて仕方なかった気持ちだったけど、僕は、彼がどう感じるか…それが恐くて、伝える事が出来なかったから。
いつだって、彼の行動は僕には分からない事ばかり。
知らない事ばかり。

だけど、僕が感じたように…彼も、僕と出会っていなかった日々を残念に思ってくれたから。

僕が彼の答えを待って、ただ彼をジッと見つめていると

「オマエって恥ずかしいヤツ。」

進藤は、ポツンというと顔を赤らめて顔を背けた。


 

◆13◆

 

……。