★母と息子のひな祭り。6★

アキラさんの可愛い写真を見せていると、進藤さんはとても嬉しそうに笑ってくれて

「スゲェー可愛い!」
「あら、本当にそう思ってくれてる?」
「うん、オレのお嫁さんにしたいぐらい!!」
「あらあら、私も進藤君にお婿に来て欲しいわ♪」

私が、手放しに喜ぶ進藤さんにつられて微笑むと、一瞬進藤さんの顔が悲しげに翳ったように見えた。

「進藤さん?」
「アッ…えっと、あの、おばさんの雛人形変わってるね。」

急に、私の背後にある雛人形の話になって、私は彼の目線を追う。

「だって、普通はお姫様は髪を結ってるじゃん?」

そういって、不思議そうに目をくるくるさせる様子が、とても愛らしくて私の笑いを誘う。

「そうね、普通はそうね。でも、私の実家に代々伝わるこの人形は肩で切りそろえた髪の毛なのよ。」
「ふふ。誰かに似てるね。」
「うふふ、やっぱりそう思った。」
「うん、スゲェーキレイな顔してるし、ソックリだ。」
「気に入った?」
「うん。」

私達は、ただニコニコし合って、そして笑った。
難しい言葉も、やり取りもなかったけれど…彼が私を気遣ってくれている事を感じることが出来て、なんだかとっても楽しい気分だったわ。


そんな事をして笑いあっていると、二人で碁盤をはさんでいた行洋さんとアキラさんがやってきて、進藤さんが楽しそうに

「あっ、塔矢〜。オレいいもん、もらっちゃった!」

そういって、差し上げた写真をみせるとアキラさんの眉が一気に上がる。

(あらあら…アキラさんったら。本当に、進藤さんに対しては年相応の反応なのね…)


私は、始めてみる息子の怒りのオーラに、驚いてしまった。
その後も、楽しそうな進藤さんの声に対して、アキラさんの態度はどんどん悪化していって、遂に…


「いい加減にしてください!こんな写真進藤に見せて!!進藤キミもキミだ!!!」


(そんな風に声を荒げるなんて…)

いつだって、私に気を使っていたアキラさん。

(でも、やっと怒れるようになったのね…。)


私は、(今日は二重にお祭りだわ!!)と思っていると…

急にアキラさんが

「いえ、僕はこれから進藤の家に行きます!」

そういうと、急に席を立ち、

「ちょっと、待てよ!!塔矢〜」

と呼びかけ進藤さんの声も聞かずに家を飛び出してしまったの…。

正直言って、台風が去ったような状態に、私は…

(いくら、同じ年のライバルだからってムキになりすぎじゃないのかしら?それとも、そんなにも特別なの…ね。)

そう思ってボンヤリしていると、行洋さんの静かな声が耳に入ってくる。


「進藤君…追いかけなくていいのかね?」
同じく固まってしまった進藤さんは、ハッとして私を見ると

「そ…そうですね。急ぎます!おばさん、ごめんね」

そういって、アキラさんを追う支度をしていた。
その、本当に心配そうに曇った顔を見ていたら…

(特別なのは、アキラさんのほうだけじゃないのね…。)

そう思って、ちょっとだけ安心出来て、私は進藤さんに顔を向ける。

「進藤さん…ごめんなさいね。アキラさんの事よろしくね。」

 

 

◆7◆