★母と息子のひな祭り。2★
「そういう訳ではありません!ただ…、一人でここまで出すのは大変だったでしょうから。」
私が物思いにふけっていると、アキラさんが慌てたように、人形を手に取ると、ひな壇の飾り付けをはじめていて…
(アキラさん…本当に良い子に育ってくれたわ♪)
私は嬉しくなって、
「ふふ、アキラさんもすっかり手馴れちゃったわね!これなら、いつ娘が出来ても大丈夫ね!」
そう言うと、アキラさんは急に動揺したように、
「…僕は、まだ十代ですが…。」
そんな事をいって話を誤魔化してきたので、
「例えばの話よ!」
と言って、
「アキラさんのお嫁さんになる人はどんな人かしらね〜♪」
と続けた。
鼻歌を歌いながら、アキラさんの横顔をに盗み見ると、そこには少し苦いような顔をした息子がいて。
(こんな風に、はっきり感情を出せるようになって来たのね…)
そう思うと、私はとても嬉しかった。
幼い頃から、囲碁一筋だった息子。
周りには大人ばかりで、誰に言われなくても感情をコントロールできるようになってしまったアキラ…。
自分でも気づいてないほど、自然に、大人びていってしまった彼…。
不憫に思いながらも、
(親の私にまで、自分を抑えて…我侭だって言った事がないなんて…どうしてなの?)
自分が大切にされているのは分かっているの。
でも…
(一度でいいから、アキラさんに我侭を言って欲しい)
それが、私の願い。
(でも、もしかしたら近いうちに見れるかもしれないわ…)
何故って?
それは、最近のアキラさんの様子。
アキラさんは気づいてないけれど、ウキウキしたりイライラしたり悲しそうだったり…感情が見えるようになったの。
今までは、良くも悪くも「良い子」としての反応しか見れなかったけれど…
(恋でもしてるのかしら?)
そう思うと楽しくて仕方がない。
いつか、自分で生めなかった女の子の代わりに、アキラさんのお嫁さんにこのひな壇を譲って、アキラさんの娘のお祝いをしてあげて…。
◆3◆
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