★バレンタインdeタイフーン3★


そして、バレンタイン当日。


一緒に住んでいるにも関わらず、わざわざ外で待ち合わせをする事になっていた為、ヒカルは焦っていた。

棋院での取材の仕事が延びてしまい、約束の時間はとうに過ぎている。

一応、途中で連絡を入れたが、本日休みのアキラは待ちくたびれているだろう…。
いつも遅刻してしまうヒカルだが、常に悪いと思っていたので、アキラが楽しみにしていた今日ぐらいは…と思っていたのだが…。

(ちぇ、仕事だし…しょーがねーよな!!)

そう思いながらも、取るものを取らずに部屋を飛び出す。
と、取材をしてくれた天野が

「進藤君!ちょっと待ってよ。」

そう言って、大きな袋を2つ取り出す。
その中には、チョコ・チョコ・チョコ…。

「えっ〜、コレ何?」

「バレンタインに届いたチョコだよ。」

「スゲェ〜…オレってモテモテ♪」

「ははは、やっぱり北斗杯効果かな?塔矢君もすごい数をもらってるよ。」

「えっ、塔矢!?」

ヒカルが驚いて声をあげると、横から記者の古瀬村も参加してくる。

「うん、さっきロビーにいたのを捕まえて渡したけど、さすが塔矢君だね。もう、いっぱいもらった後だったみたいで、棋院に届いた分は送るように頼まれたよ」

そう言って天野は、ホラっというように、後ろを向くとヒカルより一つ袋の多いチョコの山が…。

(なんだよ…アイツ、オレのを楽しみにしてるとか言って、誰からもらってんだよ!!)

仕方なく買ったチョコだがアキラに一番に渡せなかったことが腹立たしくて、思わずムッとするヒカル。
でも…自分が遅れていることで、アキラがわざわざ迎えに来てくれたらしいことに気付き…

「天野さん、オレこれから用があるから、オレの分も送っといてくれるかな?」

「あ、デート?進藤君」

古瀬村が冷やかすようにいうと、ヒカルは焦って首をふる。

「そんなんじゃないけどさ…。荷物多いのもつらいし…ついでに…さ?」

上目使いで頼むヒカルに、天野は笑いながら

「ああ、進藤君は今塔矢君と一緒に住んでるんだっけ?いいよ、一緒に送っておくから置いといて。」

「ホント?やった〜」

言うが早いか、アキラの袋の側に自分の袋を置くと、

「じゃ、よろしくね〜」

と言い残して走り去っていった。

「彼も大人になったと思ったけど、いや〜変わらないね〜」

ヒカルが残した余韻に、編集部では笑いがおこった。


編集集部を出たヒカルは、エレベーターを待つ時間が惜しくて階段で一気に1Fまで下がる。
額に汗を浮かべて、ロビーを見渡すと、探している人物の笑顔が飛び込んできた。

「進藤!」

笑顔で駆け寄ってくるアキラに、ヒカルも自然と頬がゆるんだ…その瞬間、アキラのもっている袋が目に入り、ヒカルはまたムカっときてしまう。

「…わざわざ来なくてもよかったのに…」

不機嫌そうに言うヒカルに、一瞬目を開いて…アキラもムッとしたように 

「元はといえばキミが遅れたせいだろぅ!」

と答える。

アキラだってこんな風に言い返したくはなかった。
二人で過ごす初めてのバレンタインを、楽しく甘いものにしたかった。

だからこそ、少しでも早くヒカルに会いたくて…。

(こうやって来たのに…)

行き成り「来なくていい」と、言われてしまえば…自分の想いはどうなるのだ…。

二人が暫く黙ってにらみ合っていたけれど…。

ヒカルの拗ねたような目線が、自分の手元の袋にあることにアキラは気付く。

「これは…」

アキラが口を開くと同時に、ヒカルが

「誰か女にもらったんだろ??」

と拗ねているような怒っているような口調で言う。

「はっ?」

「隠さなくてもい〜よ。別に…お前もてんもんな。今日だってチョコぐらいもらうよな。」

ヒカルだって、先程の袋以外にも、今日会った女流棋士や編集部の女性からチョコをもらっていた。
だが…、こんな風の袋いっぱいに大きなチョコから高そうなチョコまではみ出している状態で見せられると腹が立つ。

「これは!これは違う!!」

「何が違うってんだよ!?」

アキラの否定とヒカルの声が、人気のまばらなロビーにこだまする。
不思議そうに、二人のやり取りを見ている人達に気付いてアキラは

「ちょっと…」

と言って、棋士ぐらいしか知らないであろう倉庫室へヒカルを連れ込む。

腕を引っ張られて連れてこられたヒカルは、ムッとしながらアキラを睨む。
そんなヒカルの視線に

「キミは何か誤解してるようだね?」

とアキラが首をかしげる。

「何がだよ!!」

「だから、このチョコレートだよ。」

「もらったんだろ??」

「いや…買ったんだ。」

予想外の答えに、ヒカルはキョトンとしてしまう。

「はっ?」

「キミにチョコレートを強要しておいて、僕から無しというのは失礼だろう。」

まじめ腐っていうアキラに、ヒカルは益々不思議な生物を見るような目で…。

(だからって…なんて量だよ…)

一人の人間にあげるような量ではないチョコ達に…

「これ…オレにくれんの?」

「そうだ」

「…こんなに?」

そういうと、アキラが照れくさそうに…

「正直僕は甘いものを食べないから、キミがどんな物が好みか分からなくて…。今年を参考にして、来年からはちゃんと選んで買ってくるから。」

幸せそうに微笑むアキラ。

そんなアキラにヒカルは、

(来年…来年もあるのか…。ってゆーか、コイツあのすごい売り場に男一人でこの量買ったのかよ…)

呆れと、ある意味の尊敬の眼差しで見つめたのであった…。


 

◆4◆