★バレンタインdeタイフーン2★


(チェ〜、なんでオレがこんなん買わなきゃなんねーんだよ!!)

ぶ〜たれているのは、チョコ売場を探すヒカルである。

ここは某所のデパート。
アキラとバレンタインの約束をしてから、何日か経ちバレンタインの前日…。
約束こそ覚えていたヒカルだったが、なんとなく面倒で放っておいた。
あわよくば、

(どうせ、塔矢のやつは甘いもん好きじゃねぇーし逃げ切っちゃおー)

とか思っていたのだが、今朝になりアキラがとても嬉しそうに

「明日は進藤とバレンタイン〜♪」

と、浮かれながら朝ごはんを作っているところを目撃してしまい…、今になって焦っているのであった。

あんな状態のアキラを裏切ったらどんな目にあうか…。

(ッチッ!見なきゃ良かったぜ!!)

もはや、愛情というよりも恐怖によって突き動かされる男・ヒカルであった…。
幸いにも、今日のヒカルは午前中だけの仕事であった為、とりあえずデパートまで足を運んだのである。


が…流石前日。
バレンタイン一色の売り場には、不況の影響か以前ほど盛り上がりは無いにせよ、男のヒカルにしてみれば

(何つー人だかり…)

とため息をつきたくなる女性の数。
なんだか酷く場違いな気がして、ヒカルは売場を目の端に確認するや否や…Uターンを決めたのだった。


ヒカルはチョコ売場から離れ、他に代わりになりそうなプレゼントを探す。

(う〜ん、手袋は誕生日にやったしな〜)

普段なら目もくれないタイプの落ち着いた紳士服売場で、ヒカルは色々と手に取ってみるが…

(ダメだ…、何やったらいいのかワカンネ…)

アキラの様に何でも持っている男を恋人に持つと、いざって時に何やったらいいのか分からなくて困る。
ヒカルは、他人が聞いたらノロケとしか取れないことを考えながら、ため息をついた。
すると、そのため息に誘われるように綺麗に化粧をした店員が寄ってくる。

「何かお探しですか?」

にこやかに、そう訪ねられ、真剣に見ていた訳ではないヒカルは一瞬躊躇する。

「えっと…見てるだけだから」

笑顔を作ってそういうと、店員は少し頬をそめる。

「プレゼントですか?」

正に言い当てられて、驚いてしまうヒカル。

「えっ!なんで!?」

「お客様のお召しになっている服とは 少し感じが違いますから。」

「うっ!」

改めて自分の格好を見る。
確かに、格式の高そうな紳士服売り場には似合わないラフな格好だった。
そんなヒカルに、店員が何かを持ってくる。

「お父さまに贈り物でしたら、こういったものが喜ばれますよ」

そういって店員が差し出してきたのは、紺色の靴下…。

(うっうっ、サスガににコレはじじくさ過ぎる…よな。)

そう思ってヒカルは焦りながら、店員にそれを返すと

「あ、あの…とりあえず、また来ます」

そう言って、そそくさと店を出たのであった。
その日のデパートの休憩時間には、金色のメッシュの親孝行な美少年の話が茶飲み話として盛り上がったとか、盛り上がらなかったとか…。




結局、なかなか良いものが見つからない中、昼を食べていなかったヒカルは空腹を感じ…、

(あちゃ〜、も〜こんな時間かよ…。30分ぐらいで済ますつもりだったのになぁ)

そんな事を考えながら、地下に降りるヒカル。
外で食べてもいいが、ヒカルは何気にデパ地下で買うお弁当や総菜が好きであった。
地下に下がると、惣菜のいい匂いがお腹の虫を刺激する。
チョコの事などキレイに忘れ、総菜選びに夢中になり、両手に袋を下げたヒカルは、スッカリ目的を間違えてしまっていたのだが…、頭の中は手一杯の惣菜に集中している。
一刻も早く帰ろう〜!と歩き出したヒカルは、駅に近いエスカレーターの側で、食品売場の中でも少し毛色の違った店の前を通った。
ふと興味を覚えて中に入ってみると、フランスやらアメリカやら韓国やら…様々な食品の輸入品が沢山並んでいて…。

(おもしれ〜)

好奇心旺盛なヒカルは、夢中になって棚を見て歩く。

すると…

(あ、これ…)

そこには、見たことのあるパッケージがあった。
それは、ヒカルの父がよく買ってきていた、スイスの板チョコ。
普通にコンビニで売っているものより大きい分、少し高いもので…ヒカルも父が買ってくる度に掠めとっていた、カカオがふんだんに使われたチョコレートである。
そのチョコが、今正にヒカルには燦然と輝いて見えた…。

 

◆3◆

 

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カカオ70%程のチョコレートが好きです。美味しいですよね〜。
チョコレートは色々と効能があるらしいですよ。なんでも、チョコレートでは太ったり虫歯になったり…はしないそうです。
(なんか、エロスに関係するような効能はないかとネットで調べてみたんです…。)