★雨の日はキミと 1★

(夕立がくるのかな?)

僕は急に暗くなった空を見上げて少し途方にくれた。
両手には先ほど購入したばかりのデパートの袋がある。
中身は濡れて困るものでは無いけれど、やはり大切な人にプレゼントするものだから、出来れば濡らしたくはない。

(やっぱり、もう少し駅に近い所に住めばよかったかな?)

僕らの住むマンションは駅から歩いて20分。
遠くもないけど近くもない。
ここを選んだのは僕。
別に特別気に入ったものがあったわけじゃない。
同棲をしている恋人の家と僕の家の、両方に行き来しやすくて部屋がきちんと分かれていて防音で…そんな条件をクリアしていればどこでもよかったし、駅近くを求めてもっと家賃の高い所に住んだって構わなかった。
ただ…友達の多い彼の友達が、少しでも立ち寄り辛い場所…と思って選んだのが、近いというよりは少し遠い…この家だった。
彼…僕の恋人は男性で、僕らは世間体上二人の関係を言うことも出来ないし、それを表すもの…結婚も出来ない。
僕はそれでいいと思っている。
彼以外の誰と結婚したって僕は幸せにはなれないだろう。
愛し合わない二人から生まれた子供が幸せになれるとは僕は思えない。
僕の両親は本当に愛し合っていて…僕は二人から、沢山の愛情をもらったと思う。
だから、余計に自分の気持ちに素直でありたいと思う。
きっと両親も分かってくれるだろうと思う。
…いや、もう分かっているかもしれない。
あんなに他人に興味のなかった僕が、こんなにこだわる彼について…。

申し訳ないのは、両親に孫を抱かせてあげれないこと。

この身に受けた血を残してあげれないこと。

だから、僕はこの手にあるものを世に刻んでいきたい。
すばらしい一手を彼と共に作り上げていきたい…。
だが、それも僕の家が…父が同じ棋士だから言えることで、彼はちがう。
僕と出会うまで普通に友達と遊び学び過ごしてきたのだ。
時々訪れる彼の家でも、そう感じさせられる事がしばしばだ。
明るくて、少しワガママで…でも優しい彼。
彼もまた、ご両親の愛情をまっすぐに注がれて育ってきたんだ…と思う。

だから僕は…先ほど購入した袋を見た。
右手は来週中国から暫く帰国する予定の僕の父へのプレゼント。
左手には…僕の大切な恋人の…彼をこの世に送り出してくれたお父さんの分。
袋を見て僕の顔は自然と綻ぶのが分かる。

(また、負けず嫌い…って言われるかな?)

僕が彼のご両親にまで贈り物をしたい…と思ったきっかけは、少し前の事だった。
僕が彼だけを見つめていて、彼を独占したくて躍起になっていた時のこと。
本当は今もそうなのだけど、彼が与えてくれる言葉が…笑顔が…僕を安心させてくれるから…独占欲で彼を縛るのはそんな彼の愛情に失礼だと思うから…自分を押さえるように出来てると思う。
でもあの時は、彼と過ごせなかった時間を彼と一緒に過ごした人たちに嫉妬した。
彼と僕との時間を少しでも奪われる事が許せなくて実の両親にさえ怒りを覚えていらいらしていた…と思う。
でも、そんな僕に彼は言ってくれた。

結婚が出来ない二人だから、僕の両親に親孝行したい…と。

そんな先の事まで考えて、僕の周りの人たちの幸せまで願ってくれた彼。
本当に嬉しかった。だから…

(これ喜んでくれるだろうか?)

 

 

◆2◆