★雨のち晴れ★
『しとしと… しとしと…』
(雨がふる音なんて誰がきめたんだろう…)
進藤ヒカルは、窓に体を向けて、外を眺めた。
窓際にベットを置きたくないと言って、窓から一番離れた壁にベットを置いたの
は自分。
ドアに引っかからないようにベットを置く為の壁は残された一面しかなく…
案外と風水などを気にする同居人には顔をしかめられたけど…。
彼と自分は、お互いに忙しい身。
手合いで遠方に飛ぶ彼を送り出し、一人残った部屋で窓をはなった風通しのよい部屋にいると、嫌でもあの5月の日中を思い出す。
だから、ヒカルは心中をかくして、窓際ではない場所にベットを置くことにこだわった。
(…だけど…)
『しと…しと…』
軽くつむった目には、まるで雨が見えるかのように存在を主張する。
(あ〜もう!うるせぇ)
ヒカルはあきらめて目をあける。
雨は嫌いじゃないはずだった。
狭い部屋に湿気が重く潜む空気の中一人でいると、本当にこの世に一人取り残されたような…そんな気持ちになる。
(まるで オレ自身…)
そう思うと、なぜか愛着と言うか…共犯者めいた気分でこの雨と言う現象を向かえることができる。
ヒカルは唇の端を少しゆがめる。
誰かがみていたら、泣いているのかと思っただろう…が、生憎今この部屋にもこの家にも誰もいない。
(…たまには…泣いてみようか?)
佐為が消えてからというもの、ヒカルは たくさん泣いた。
泣きすぎて、瞼が重すぎて寝不足や体調不良によく間違われた。
いや…実際、寝不足だったかもしれない。
寝るときもいつも一緒だった佐為。
どんなに体が疲れていても、寝る瞬間に彼を思い出して泣いた。
次の日のことを思って寝ようとしても涙は一向に止まらなくて…。
(寂しい…)
(会いたい)
霊だった彼に温度なんてあるはずないのに… 、
彼がまとっていた空気がどんなに暖かいか思い知った。
一人になった自分には、温もりが足りなくて、それがまた…
(寂しい…)
(会いたい)
気持ちを強くする。
決して叶うことのない想いに疲れた頃、ヒカルは泣かなくなった。
でも時々…こういう雨の日にヒカルはわざと泣く。
もっと彼にしてあげれたことを…幼く愚かだった自分を…彼との3年間を…思い出しては泣いた。
それは悲しいけどヒカルには大事なことで。
不幸に酔いたいわけではない。
ただ佐為を忘れたくない…その想いかヒカルに、わざと塞ぎかかったかさぶたはがすような真似をさせる。
そんな事をしなくても、いつまでも彼のことを忘れる分けないと…。
彼は自分の碁の中にいると…。
頭では分かっていても、佐為との記憶を少しでも損なうことへの、恐怖…。
それを笑い飛ばせるほど、ヒカルは大人ではない。
囲碁幽霊と決別したあの日を振り返って過去の自分を幼く思ったとしても。
そうして、電気もつけない部屋で、まるで海の底に沈んでしまったような気持ち
になりながらヒカルは目を閉じた。
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