★Angel〜佐為が消えた〜6★
ヒカルが消えて、もう1週間が経とうとした。 ヒカルと一緒に行った場所の全てを周り、色々な人に会い…。
アキラは焦っていた。 ヒカルは決して弱い人間ではない。 (ヒカル…何処にいるんだ?) 心が弱くなっていくのを自分でも感じるが、ヒカルを見つけなければ…とういう気持ちだけが、アキラを支える。
「まるで、君のほうが消えてしまいそうだな?」 声のほうを向くと、佐為とも懇意にしていた為、共に藤原邸によく出入りをしていたアキラの上司である緒方がタバコを吸いながらアキラを見下ろしていた。 「緒方さん…。」 そういいながら、アキラの目の前に腰を下ろす緒方。 「ご心配頂かなくても、大丈夫です」 と、口では言いながらも、その目が労わるような色をみせるので、アキラは居たたまれなくなる。
「そうか…アキラ君が生まれる前の事だからな。16年前、『神の城』の住人が二人…神の意思に逆らってこの地に降り立った事があった。」
アキラは、先日父から聞いた事を思い出す。 ------------------------ 「アキラ…ヒカル君は、神に祝福されない子供だ」 「えっ!?お父さん…一体何をいってるのですか?」 「彼の父は、『神の城』でも高い地位のある人物で…佐為さんや私は、『神の城』に招かれる度に、囲碁を打つ友人であった」 「その頃彼には婚約者がいた。神のご意思のもとに決まったものだ。だが、彼はその意思に反して恋をした。神の城で、召使として働いていた女性だ。明るくて、可愛らしい少女で…皆に好かれていた…ヒカル君のように」 それは、行洋が『神の城』に行く事を拒んだ理由でもあった。 「婚約者のいたヒカル君の父は、それに逆らいその少女に愛をささげた…そして、少女は身ごもり、人に知れる前にこの地に下りた。神は怒り、捜索隊を向け、何処もかしこも探したが二人は見つからなかった。それは…二人が、誰もが恐れる森の奥深くでだれにも会わず…二人だけで生きていたからだ」 「まさか…それが…」 「ヒカル君の両親だよ」 「!」 あまりの事に言葉が出ないアキラ…。 それは、森の奥深くに住み…誰とも交流を持たなかったせいなのか…。 「お父さん…それではヒカルは…」 頼るものなど居ない一人っきりのヒカルを残して『神の城』に旅立った佐為に腹立たしさと怒りがこみ上げてくる。 「アキラ…お前も碁打ちなら分かるだろう?遥かなる高みを目指す…その心を」 アキラが激しく言い返す。 「アキラ…、お前の言う事も分かる。だが、佐為さんは決してヒカル君を捨てたわけではない」 穏やかな瞳で、アキラを見つめる父に、アキラも少し冷静になり聞き返す。 「『神の城』で待っているという事だ。神に見放されたあの子が苦しみも悲しみも超えて、『神の城』にやってくるのを…」 あまりの言葉に、思わず握った手に力が入る。 「そうだが、その言葉は通用しないだろう」 ------------------------ 父との会話を思い出し、こんな消え方をしたヒカルが16年前の事件の子供だと分かる前に、彼を見つけなければ…。
呟くようにいう緒方の言葉がアキラの耳に引っかかる。
ガタン!!と椅子を倒す勢いで立ち上がるアキラ。 「どうしたんだい?アキラ君??」 と緒方が言っているが、アキラの耳には届かない。 (きっと、ヒカルは佐為様と会う前の家に帰っているんだ…) しかし、それは誰も知らない事なのだ…佐為以外…。 (佐為様に会うことが出来ない以上…僕が探すしかないんだ…) アキラは懸命に、ヒカルとの会話にヒントはなかったか考える。 (父は、ヒカルは人に恐れられる森の奥底に住んでいたといっていた…この地には、そういった森がいくつもある…なにか、手がかりは…) 森…森といえば、木が沢山あるものだ…。 (そういえば、前に彼は、佐為様を大きな樹のようだ…といっていた。) それは、アキラとヒカルが対戦をしたとき。 「キミは、佐為様に囲碁を習ったんだろう?」 初めてヒカルと打ったとき、アキラは当然のように勝ちを収めたのだが、ヒカルのひらめく様な新鮮な手に驚き、またその経験の浅さを考えると…いずれ力をつけるであろうヒカルに、アキラは興味を持っていた。 「そうだぜ!」 それが自慢だといわんばかりのヒカルの満面の笑みが思い出される。 「だからかな、ちょっと佐為様と打ち方が似ているね。」 自分じゃワカンネ〜けど?と、不思議そうにしているヒカルに 「そうだよ。でも、佐為様が柳のようにしなやかで優雅なのに対して、キミは虎のようなしなやかさだってキミと対戦した人が言っているのを知っているかい?急に噛み付いてくるんだって」 そう冷やかすようにアキラが言うと、さも楽しそうにヒカルが笑う。 「オレが虎〜??なんか、かっこいいな!オレ、虎とは仲いいんだぜ!」 その時は、ヒカルの不思議な言葉に (変わってるんだな…) としか、感想を持たなかったが… (菩提樹の樹がある、虎のいる森…)
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