★Angel〜還る場所〜4★


いつまでも リモコンで遊んでいるヒカルを無理やり風呂場に押しやると、
アキラは明日の支度を始める。

明日はヒカルにとって、新しく…そして険しい道への第一歩の日である。

(彼は大丈夫だろうか…)

佐為が消えてから、普段は勝気な彼の、脆く繊細な部分を自分は見てきた。
そして、ひた向きで力強い部分も見てきた。

だからこそ、アキラの胸には心配ばかりがよぎる…。
この棋院では、ただ強いだけではやってはいけない。
世の中をまるで知らない自由に飛び回ってきたヒカルは上手くやっていけるだろうか?

それに、勝負には勝ち負けがどうしても出てくる。
ヒカルは、強い。自分が唯一認めるライバルだ。
でも、彼はまだ知らない。本当の勝負の世界がどんなものか…。

(僕に彼の為に出来る事があるのだろうか…)

あるならば、例え何をおいても叶えてあげるのに…。

アキラが物思いにふけっていると、烏の行水のヒカルが水を滴らせながら、

「お〜い、風呂あいたぞ〜。」

と暢気にアキラに呼びかける。

その声に、振り向くと、

「ヒカル!なんだ、その格好は!!」

腰にタオルを巻いただけの状態で、ヒカルがアキラを不思議そうに見ている。

「何って?」

「早く、何か着ないか!」
「だって、風呂上りはいつもこうだぜ!」

行き成り怒られて、ヒカルはムッとしながら髪を拭いている。
その度に体が揺れて

(もしタオルが取れたらどうするんだ!!!)

アキラはハラハラしながらも、ヒカルの薄い身体から目が離せない。

が、不思議そうにしているヒカルと目があって、アキラは咳払いをする。

「ともかく!まだ寒いんだから早くなんか着て!!明日は初日なのに風邪なんてひいたらどうするんだ!!」

その言葉に渋々、服を着るヒカルにホッとして、アキラは

「じゃあ、僕もお風呂に入るから…キミ先に寝ていて。よく髪を乾かすんだよ!」

佐為よりも口うるさいアキラの小言に、なんだか笑いがこみ上げながら

「お〜、おやすみ〜」

そういいながら、ヒカルは手を振った。

一方アキラといえば、風呂場に向かいながらもう一つ忘れていた心配事に頭を悩ませるのだった…。

 

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