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★Angel~還る場所~3★


「進藤君は 今まで大会には出た事がないんだの?」

会長は温厚そうな人で、優しい目をヒカルに向ける。

それでも、初めて味わう重々しい雰囲気にヒカルはすっかり呑まれてしまう。

「はい、でもオレ頑張ります!」

緊張し、声を上ずらせるヒカルの初々しい答えに、老人に近い会長は笑みをこぼす。

「うむ…普通の手合いには問題ないだろうが、勝負の世界となりと、実力だけでは勝てないこともあるでの。ま、焦らず頑張りなさいよ。」

そういうと会長は、力強くヒカルの肩を叩く。
驚いて目を見開いているヒカルを見て、更に顔をくしゃりとさせると、顔をアキラに向け笑いかける。

「じゃ、塔矢君しっかりしごいてやんなさいよ。」

「はい。力不足ながら、尽力します。」

会長の眼差しに、真っ直ぐと向き合い、そつなく答えるアキラに、会長もうなずく。

「進藤君、君は運が良いよ~。塔矢アキラの下につけるなんて。彼なら安心だからの、何でも聞きなさいな。」

そう言うと、会長はまたヒカルに笑いかけた。


会長との面談が以外に早く終った為、アキラはヒカルに棋院内を案内して回った。
本来ならば休日の日である為、建物には人気が殆ど無い。
だだっ広い敷地を回り、食堂で食事を取って、ようやく二人の部屋についた時には、ヒカルはヘロヘロであった。


ヒカルの荷物はとうに運び込まれているから、すぐにでも生活できる。
本当はほとんど荷物のなかったヒカルだが、明子が「コレも必要よ」「アレも必要よ」と、どんどん荷造りをしていった為、かなりの荷物になってしまい、それらが既に封とかれた部屋はとても充実したものになっていた。

その整えられたベッドに倒れ込むヒカル。

「ヒカル…、大丈夫?」

アキラが心配そうにヒカルのベッドの脇に腰をおろす。

「うん…ちょっと疲れただけ~」

はぁ…と息をはいてヒカルが顔をあげる。

「そうだね、環境に慣れない内は大変かもしれないけれど、慣れればたいしたことないから。」

優しくアキラがヒカルに笑いかける。
その笑顔に、ヒカルの顔が曇る。
少し、間をおいて…ヒカルが意を決したように

「な…。お前、一年経ったし、本当は寮出れる筈だったんだろ?ごめんな…オレのせいで…。」

寮に入って一年経ったものは個人の自由で寮を離れて生活をしても良いことになっているのだ。
何も知らないヒカルだが、その事は棋院に入る前に聞かされていたので、今回アキラが同室になるという事は、嬉しくもあり…そして、心配もしていたのだ。


そんなヒカルの気鬱を感じ、アキラは笑いながら

「そんなこと?僕はうれしいよ。キミと暮らせて。もともと、帰る気はなかったし…気にしなくていいよ」

そういうアキラにヒカルの顔は暗い。
そんなヒカルの背中を軽くたたきながら

「キミらしくないな?キミと一緒だったら、いつも打てるし僕は本当に楽しみに してたんだ。それに僕は二人暮らしは初めてだしね」

「えっ?お前去年はどうしてたの?」
「この部屋で一人だったよ。僕の担当が、段位としては上の方で寮をとっくに出ていたから。半分以上、そういう理由で一人部屋の人が多いんだよ。ヒカルも一人の方がよかった?」


茶化すように笑うアキラの膝を、ヒカルが軽く叩くと

「バカ!そんな事あるか!!オレ…アキ…あっ、塔矢…と一緒の部屋でよかったと思ってる…」


いいながらも、語尾が小さくなるヒカル。

「ヒカル、今は二人しかいないんだから、出きればいつも通り名前で呼んでくれないか?」


アキラが顔をベットに埋めてしまったヒカルをのぞき込むように話しかけると、ヒカルが目を赤くして顔をあげる。
アキラもそれに気づいて、言葉をなくす 。

「ヒカル…」

「よかった…。オレお前に、初めて進藤って呼ばれて…すごぃ やだった…。なんかお前が遠くに行っちゃったみたいで…。」


目をふせるヒカルのまつげには、少しだけ涙がのこっていて…アキラはすい寄せられるように唇を寄せると

「いつまでもキミの側にいると誓っただろう?」

そう言ってヒカルを見つめるアキラの瞳は、揺らぎなく力強い。
そんなアキラに安らぎを覚えて、ヒカルはアキラの髪に手をのばす。
ヒカルの熱い指が一瞬アキラの頬にふれて、アキラは胸が痛くなる。
このまま抱きしめてしまいたい…でも…。
アキラは欲望を押し殺してヒカルの頭は軽く叩く 。

「さっ、明日は早いからもう寝なくちゃ!お風呂沸いてるから 先に入っておいで。」
「え?いつの間にいれたんだ?」

ずっと一緒にいたのに…と不思議がるヒカル、アキラは小さなリモコンをみせる。

「これで遠くからでも、部屋の温度調節やお風呂をいれる指示が出きるんだよ」

初めてみるシステムにヒカルはすっかり元気になって
「ハイテク~!おもしれ~」と、はしゃいでいた。

 

4へ


そんなハイテク機器があるならば、私がほしゅうございます。電話で指示するのとかはありましたよね…確か?