★Angel〜還る場所〜15★


授業はつつがなく進んだ。

といっても、皆から既に1ヶ月の遅れを取っているヒカルには、分からない事も多く眠くなる事も多かったが…

注目される視線を感じて、なんとか自分を保つ事が出来た。

(オレは、アキラのライバルとして試されてるんだ…)


自分をライバルだと言い切ってくれたアキラの信頼を裏切らないように…ヒカルは、気持ちを新たに引き締めたのだった。
それでもヒカルはチャイムが鳴り響き、午前の授業の終わりを聞くと気を緩めて伸びをした。

「う〜ん」
気持ちよさそうに伸びるヒカルをみて
「はは、オマエこんな聞いてるだけの授業って苦手そうなのに、よく頑張ったな!」

そう言って和谷がヒカルの頭を撫ぜる。

されるがままに、撫でられながら
「ん〜、でも疲れた〜。」
「最初のうちは、慣れないからね。直ぐに、慣れるよ。」

教科書をまとめながら、和泉が笑い席をたつ。

「ほら、オマエも早く仕度しろよ。飯、食いっぱぐれるぞ!!」

そういって、和谷も席を立つ。

「あ〜!ちょっと待ってくれよ!!」
 
そう言いながら慌てて、教科書をまとめて二人の後を追う。
と、教室がざわめいてその視線が一点に集中しているのに気づく。

「あれ!?」

皆の向ける視線の先には

「あ…塔矢…」

今朝分かれたばかりのアキラが、教室の扉から教室を見渡しているところだった。

ヒカルが、それに気づいてアキラへと足を向けたとき

「塔矢さん!!」

『ドン』

自分の体に体当たりするように、何かが通りすぎていく。
急の事に、前によろめいたヒカルを和谷が抱きとめる。

「進藤!大丈夫か?」
「あ、うん。サンキュー」

驚きに、怒りより戸惑いが先に来てしまい呆然としていたヒカルに和谷が心配そうに覗き込む。
と、
「ひ…進藤!!」

よく通る声が聞こえ、そちらに顔を向けるとアキラが自分の前に出きた人だかりを押しのけて、ヒカルの傍へと駆け寄ってくる。

「大丈夫?」

アキラはヒカルの傍まで来ると、和谷にまだ肩を抱かれているヒカルの体を奪い取ると顔を覗き込む。
入り口の傍で、こちらの様子を見守っているアキラの崇拝者達の気配が険しくなるのを感じてヒカルはまた胸のムカつきを感じた。

「ん、大丈夫。サンキュ。」

それだけ言うと、アキラも安心したように微笑む。

急に横槍を入れられた和谷は、不機嫌そうに

「おい、何でアンタがココにいるんだよ?」

アキラのいる仕事場は、この教室とは反対方向なのだ。
棋院では、飛ぶ事を禁じられているから滅多な事では指導者が教室に現れる事など無い。

「もう、お昼だろ?」

そう言うと、極自然だ…と言わんばかりにヒカルの手を引くと

「さあ、進藤。早くしないと、昼抜きになってしまうよ?今日は仕事で、棋院の外に行ったからランチボックスを買ってきたんだ。庭園で食べよう?」

「え?ああ。」

さっさと先を歩いてしまうアキラに腕をひかれながら、ヒカルは和谷と和泉を振り向いて

「じゃあ、また後で〜!!」

そういって、アキラと共に後ろの扉から消えていった。


「アイツ…分かってんのかよ?」

後に残された和谷が苦々しげにつぶやいて、同じく二人が消えた出口をみつめている教室の前方の扉にいる軍団に目をやったのだった。

 

 

 

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