★Angel〜還る場所〜10★

「それにしても、びっくりした〜!」

ヒカル達がとっていた席に4人で腰をかけると、ヒカルは嬉しそうに和谷に話しかけた。

「まさか、和谷と会えるなんて〜」
「あのな〜、それはこっちのセリフだよ!」

そう言いながらも和谷と呼ばれた少年もとても嬉しそうである。
ヒカルより少し年長そうな彼は、ヒカルにいたずらっぽい目を向けると、

「何?オマエ、俺が棋院で働いってるって言ったとき全然関心なかったのに、本当はうらやましかったのか?」

と、ニヤニヤしながヒカルの鼻をつつく。

「なっ!?」

その行為に、先ほどから親しそうな二人を見ながら黙りこくっていたアキラが声を上げる。

横から手を伸ばすと、ヒカルに差し出された和谷の指を静かにはずし

「失礼ですが、貴方は進藤とはどういう関係ですか?」

詰問でもするように鋭い目を向けられ、ヒカルとの再開を喜んでいた和谷も、ムッとしてアキラに向き合った。

「行き成りなんだよ!おまえには関係ねーだろ!!ちょっと有名だからって、冗談じゃねーんだよ!!」

和谷は腹立たしげに、声を荒げると横を向く。
棋院に入る前から塔矢アキラの名前は有名だった。
塔矢行洋の息子にして、その腕は愛を配る天使たちが集うこの棋院のものでも上位に行くほどである…と。
そんな評判だけでも、自力で力をつけてきた和谷にとっては面白くないのに、彼がアマチュアの頃から世話になっている師匠が塔矢行洋に対して、一方的にライバル視をしている為…。

(こいつにゃ、絶対負けられねーんだよ!!)

アキラが初段だった時に、何度か手合わせをしている二人だったが、アキラのほうは全く自分を覚えていない様なのにも腹がたつ。
だが、なんと言ってもアキラは仕事として囲碁を打っているのだ。
自分は、まだ初段として見習いの身に甘んじている…。
改めて、自分より一つ先に飛び出てしまっているアキラを見て、奥歯をかみ締める。

どんなに悔しく思っても、自分が試験という山を越えなければ同じ土俵に立つことも叶わない。
その間に、アキラは仕事でドンドン力をつけ評判をあげ…今では新人を指導する立場にあるのだ…。

(それが、コイツだったなんて…)

和谷の厳しい顔に目を丸くしている、少年の顔をみつめる。
和谷が、自分のほうを向いたことでヒカルは驚きから我に返り…

「あれ?和谷とあ…塔矢と知り合いだったんだ?」


和谷とアキラを見比べるように、首を忙しく振って顔をみるヒカルに

「いや…初対面だけど」

即答するアキラに和谷の眉があがる。

どうしてヒカルがここにいるのかも気になっていたし、ヒカルの顔を立てて怒りを納めるつもりだったのだ。
半分以上はやっかみだということも自覚している。

だが…

(やっぱり、コイツ気にくわねぇ!!)

一方的に意識しすぎている自分が腹立たしくて、納まったはずの熱がぶり返してきた和谷は、アキラを睨みつけ

「お前に負けた、たんなる初段は覚えてももらねーのかよ!でも、こっちは知ってるぜ、有名人様!!」

更に、食らいつくように声を荒げる和谷にヒカルは驚いた。
ヒカルの中で和谷はいつだって、元気で…ちょっとガサツだけど優しい天使だし…ヒカルがアキラ以外に初めて友達になったのも和谷だ。
そんな彼が、眉をつり上げて怒る姿に…ヒカルは穴が開くほど和谷をみつめた。

 

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