★Angel〜還る場所〜1★


季節は夏へと移り変わる頃。

佐為との別れから一ヶ月…ヒカルは、アキラが勤めている関東棋院に勤める事になった。

新入段のもの達は既に、仕事についているこの時期に、異例の入所である。

ただ、佐為が神の城に行った後、この世界でナンバーワンと尊敬されている塔矢行洋と、その息子であり関東棋院の若き実力者・塔矢アキラの推薦があってこその入所であった。

ヒカルが佐為に碁を習った事は、秘密にされている。
誰しもに尊敬されていた佐為が引き取った子供。
それが、分かれば今以上に話題を集め、ヒカルのことをかぎ回るものも出てくるかもしれない。
ヒカルの両親は、神の城から駆け落ちした…言わば、世捨て人であり罪人でもある。

今はまだ、誰にもその事を知られてはいけない…。
それは、当のヒカルにさえ…。

その為、行洋がその事を伏せて妻・明子の遠縁として、ヒカルの入所の手続きをしたのだった。

本来、入所には度重なる試験がある。
例外を認められる場合は、棋院に関係する人間が推薦する事・そして本人の実力を棋院のものが認めることであった。
ヒカルの場合、推薦については全く問題がなく、その実力も試験官が息を呑むほどだった。

無名の新人のヒカルに、誰もが注目している中、ヒカルは関東棋院の入り口をくぐる。

ただ、佐為に近づきたい…。


その想いが、ヒカルを少しずつ大人へと変えていく。

青々とした大きな樹の下、ヒカルは入り口で待ち合わせをしているアキラを待った。
いつもは時間にルーズなヒカルも、この日ばかりは早くから起きて、支度をしていた。
…というか、佐為の家を出てから入所するまで、塔矢家で世話になっていたヒカルの晴れの日である支度を嬉々として明子が手伝った為である。

(でけぇ〜)

ヒカルが、その門の大きさに感心していると急に肩を掴まれる。
驚いて、軽く声をあげると、待ち人であるアキラがヒカルの声に目を丸くして立っていた。


「ヒカル…どうしたんだ!?」

アキラは、呼吸を整えて驚いたまま黙っているヒカルをみつめる。
その眼差しに、ヒカルは息をのむ。

(こいつ…かっこい〜)

棋院では、普段私服でかまわないが、今日のように入所者がいるような晴れな日には決まった服装をきることになっている。
色も、棋力によって変わってくるのだが、今のアキラが来ているのは明るめの紫の色の生地で作られたガッシリとしたジャケットに、中はベルトで止められた黒のタートルネック。

人間界で言えば軍服にも似た、その制服がアキラにはとてもよく似合っていてる。


今まであまり、アキラの容姿に注目した事のないヒカルであったが、眩しい光の中で自分を見つめるアキラに、言葉をなくして見つめるしかなかった。

いつまで経っても、自分を食い入るように見つ続けるヒカルにアキラも動揺が走る。

(なんだ?僕に何かついているのか?)

ただでさえ、本日のヒカルを見つけてからその愛らしさに心奪われていたアキラだ。

ちなみに、ヒカルは新入段ということで、白がベースのハイネックの上に、金具で留められる紺のジャケット(アキラのものより、生地が薄い)を羽織っている。
この服は、アキラが入所したての頃にも着たものであるが…大体にして体格のいい男性も着るものなのに、男女同じ形の制服とは…と、服にさほど興味のないアキラでさえ思う、かわいらしいデザインになっているのだが。

(…今日は、この制服を考えた人に感謝しなければ…)

そう思うアキラであった。


 

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今回出てきました二人の制服姿はGALLELYで公開中です。よろしければ、そちらもご覧ください!
果たして、可愛らしさとかっこよさは出ているのでしょうか…という謎につつまれながら!GO