★歯磨き上手にできるかな?★


進藤は歯磨きが異様に早い。
僕がその事を指摘すると、

「オレ、虫歯が出来ない体質だから〜」

と至って暢気だ。
僕の家では、父の代からお世話になっている歯医者さんがいるので子供の頃から歯の磨き方には厳しく教わっているため、進藤の磨き方には疑問を通り越して心配になってくる。

「進藤…一度歯医者さんに行ってみないか?」

今夜もさっさと、歯を磨き終わってくつろいでいた進藤を捕まえて僕は提案した。
すると、彼は心底嫌そうな顔をして

「え〜なんでだよ?オレ虫歯ないぜ??」

そういうと、読んでいた雑誌に顔を戻してしまう。

このままでは、いけない。放っておいたら、進藤の可愛い口の中が総入れ歯になってしまう危険だってあるんだから!!
僕は心を鬼にして彼を歯医者に行かせるように仕向ける事にした。

「進藤。君、虫歯がないっていうけど歯の病気は虫歯だけじゃないんだよ?」
「なんだよ〜。急に…」

急に説教モードになってしまった僕に、進藤も渋々雑誌から顔をあげる。

「磨きが足りない人はね、歯茎が弱って来るんだよ。そうすると、どうなると思う?」
「?しらね〜」
「歯槽膿漏になるんだよ。それがひどくなると、歯茎が弱って歯を支えられなるから総入歯って事だってあるんだからね」
「!総入歯〜!!」

思ってもいなかったであろう事を言われて、流石に彼もちょっと青ざめている。
僕は彼のそんな素直なところが好きだ。
簡単に人の言う事を鵜呑みにしてしまう所が時々心配でたまらないけれど、そこが可愛くて仕方ない…って、そんな事を考えている場合じゃなかったんだ。
今僕が彼に告げた事は、僕が幼い頃から老歯科医に教えられてきた真実なのだから。

「とりあえず、歯が今どんな状態にあるのか知るのもいいことだよ。」
「う〜ん。でも、オレ歯医者って行ったことねーモン。」
「確かに今までは僕らも義務教育だったから、歯医者に行かなくても歯の検診は受けれたけど、もう君も僕も社会人なんだから自分で受けに行かなくちゃ」
「そんなもんかな〜」
なんとなく渋っている彼を、脅したり宥めたり…で、ようやく僕の行きつけの歯医者に行くように約束をとりつけた。

「じゃあ、僕が電話しておくからキチンと行って、検診と歯石をとってもらうんだよ」

僕が諭す様にいいうと、

「お前は、オレのお母さんか!?」

とちょっと拗ねながらブツブツ言っていたが、総入歯の恐怖にすっかりおびえてしまったらしい進藤は、翌日大人しく歯医者に行った。

 

 

◆2◆

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