お鍋ぐつぐつ5★
結局その後、緒方と葦原に押し切られる形で、塔矢邸では鍋の準備が進められていた。
重たかった荷物は、車で先に緒方&葦原コンビが運んでくれたので、ヒカルは「ラッキー」などと嬉しそうだったが、アキラとしては
(どうせ、くだらない事で僕ら…というか、鈍い進藤は気付かないから、僕ばかり気を使わされるんだ…)
と、苦い気持ちでいっぱいであったが、あの鍋の材料である。 どうせ、二人では食べきれないので、ありがたいと思わなければ…とため息をこぼした。
そして、塔矢家の台所である。
「白菜〜白菜〜」
一人暮らしが長い葦原は、料理が美味いと評判である。
実際アキラも、一人のときは何度か、その手料理を味わっているだけに、この4人の中では一番頼れる人物である。
そんな葦原が楽しそうに、既に置きっぱなしにしているエプロンをつけて下ごしらえをしている側で、緒方はタバコをふかしていた。
「緒方先生!ちょっとは手伝ってよ!!」
葦原に、海老の殻むきを命じられたヒカルが、広いテーブルの元、せっせと手を動かしながら、向かい側にすわる緒方に話しかける。
拗ねるように唇を尖らせるヒカルに、緒方はニヤリとわらいながら、
「俺が活躍するのはこの後だ。鍋のなんたるかも知らんヤツは、黙って下ごしらえをするんだな。」
「む〜。緒方先生は、鍋について詳しいの?」
「フッ、俺を誰だと思っている。飛び切り美味い鍋を食べさせてやる。」
だから、がんばるんだな。…という緒方の言葉に…、特に「飛び切り美味い鍋」という言葉にすっかり心奪われたようで、ヒカルは ニコニコ笑いながら海老を向き続ける。
その、なんだか和やかな様子を、コチラもまた、葦原に命じられて野菜を洗っているアキラは面白くない。
葦原と共に、水場に立っている為、アキラは二人の会話を背中で聞くような形になるのだが、時折聞こえる笑い声が妙に勘に触る。
(別に、鍋は大勢でやった方が楽しいというけれど…僕は、ちっとも面白くない!!)
そう思いながら、『バッキ』と白菜を5枚ほど根元から剥き、こちらも鈍い葦原に
「おっ、アキラ結構力があるんだな〜。」
などと、妙に感心されたのだった。
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