★お鍋ぐつぐつ1★

 

「おい、進藤!それは、まだ早い。」

白いスーツに、眼鏡を湯気で曇らせた緒方の叱責が飛ぶ

アキラはその声を忌々しく聞きながら、なぜこんな事になっているのか…思い出していた。

 

その日は、塔矢家の主である行洋と妻明子が中国に行っている為、息子アキラ一人であった。
そんなアキラと打ちに来た進藤ヒカル。

アキラはさておき、好奇心旺盛なこの青年と少年の間の彼は、ともかく思いつきで行動するところがあった。

両親がいないという塔谷家の居心地のよさに、ヒカルは「お前、一人で飯の支度ってつまんねーだろ?オレ、一緒に食っててやるよ!!」と、勝手に(ハタハタ恩着せがましく…)アキラに告げると、呆然としているアキラをよそに

「鍋!冬はやっぱ鍋だよな!!」

と一人騒いでいた。

そんなヒカルの為に、アキラとて一人の食事が楽しかったわけではないので、二人で買出しに出たのである。

とは言え、大して家事などやった事のない少年の買い物。

「な〜、鍋って何入れてんだっけ?」

と言って、ヒカルが手に取っているのはソーセージ。

「進藤、鍋にソーセージは邪道じゃないか?」

と言って、アキラが鶏肉を手に取る。

「肉は豚じゃねーの?」

「家は、鍋では鳥だけど?」

「いんや、豚!」

「鳥だ!!」

口が触れそうなほど、顔を近づけながら、二人が言い争う。

「じゃぁ〜、どっちが美味いかはっきりさせようぜ!」

そう言いながら、ヒカルが買い物カゴに豚肉を入れ込む。
その目を、睨み返すように

「望むところだ!!」

アキラも鶏肉をカゴに入れたのだった。

 

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