★真夜中のメロディ★
(本当に信じられない…。) テェロテェロ… テェロテェロ…♪ 何度も鳴り続けるのにも関わらず、この迷惑音の元凶である携帯電話の主は目覚めない。 (進藤は一度寝ると、なかなか起きない…。寝起きもいい方ではない…。) (だからって、普通これは起きるだろ…?) アキラは、眉間に皺を寄せて、幸せそうに眠り続ける恋人を見下ろす。 (まぁ…確かに久しぶりだったから、少し疲れさせてしまったかもしれないけど…) と、アキラは先ほどまでの行為を思い出し少々照れながら、ヒカルの携帯に手を伸ばし、不愉快なアラームを切る。ヒカルが一心に自分にしがみ付く可愛らしい姿を思い出しながら。 思いもよらぬ音によって目が覚めてしまったアキラは、なんとなく寝付けなくて健やかに眠るヒカルをせめてじっくり見ようと、体を起す。 (ここが、東京でなかったら、こんな日は星が良く見えるんだろうけど…) 普段、星にも月にも興味がないアキラだが、期待した明かりが全く見当たらず肩透かしをくらった気分になった。 アキラは、こんな夜中に一人で起きてしまったことが悔やまれて窓を閉める。 ヒカルといえば、先ほど入り込んだ冷気に布団を引き上げて顔を半分以上かくしてアキラに背を向けてしまっている。 (君と出会わなければ、知らなかった痛みだよ…) アキラは、布団からちょっとだけ飛び出ているヒヨコ頭に手を伸ばす。
その瞬間、再度先ほど止めたはずの携帯が鳴り始める。 テェロテェロ… テェロテェロ…♪ アキラはびっくりしてヒカルの携帯を拾い、電源を切る。 (さっき切ったばかりなのに、また鳴るなんて…進藤はどうしても、起きたい理由でもあるんだろうか?) ヒカルの意図が全く分からなくて、布団の下に隠れた顔を覗き込む。 すると、1分も満たないのに再度携帯が鳴る。 (もしかして、止め方が特殊なんだろうか?) アキラはパソコンなどの機械は触るし得意な方だと思う。 (これは、進藤を起さないことには…この電子音から解放されない) と、流石のアキラも腹を決めてヒカルを起しにかかる。 「進藤…進藤…起きないか」 とは言え、寝ているヒカルを起すのは可哀想で限りなく声が小さい。 そんなことを、5分ぐらい続けてようやくヒカルが目を開ける。 「ん〜、なんだよ〜」 すると、ヒカルもハッとして携帯を掴み取る。 暗闇にも分かるぐらい、気まずげな顔を俯かせながら、 ヒカルを起している間に、こんな真夜中にアラームをかける行動に腹が立ってきたアキラだったが、後悔いっぱいというに姿で謝るヒカルに、怒りをすっとひっこめた。 (こんな風に、俯くときの進藤には何か僕には分からない理由があるから…) と、過去の苦い思い出を振り返って、可哀想なほど肩を落とすヒカルの顔を覗き込む。 「別に怒っているわけじゃないんだ。」 きっと、その理由を自分は聞くことが出来ないだろう…とアキラは自嘲するように笑い、その顔を隠すように俯く。 (こんなに僕は君のことしか考えていないのに…。君を僕だけのものにしたいのに…。) 先ほどの胸の痛みがよみがえる。 「あの…」 ふいに黙ってしまったアキラに、ヒカルは布団から出てアキラの前に間をつめて座る。 「あの…お前の生まれた日だって…お前の生まれた時間だって聞いたから…」 押し出すように呟かれた言葉に、アキラは目を見開く。 「えっ…?」 「だから!お前が生まれた時間に一番に言いたかったんだってば!!」 アキラから目をそらして膨れっ面になっているヒカルは、暗闇にも真っ赤になっているのが分かる。 「えっ…?えっ…??なんて…?」 意外な言葉に、回転のいい頭をフリーズさせて目を瞬き続けるアキラに、 (も〜ここまで言ってんのに…。ホントこいつの頭って囲碁以外つかえねぇのかな〜) と、茹でタコの如く真っ赤になりながらヒカルが悪態をつく。
ヒカルは向き合ったアキラのひざ頭に自分のひざ頭をくっつけて、俯くアキラの目を自分に向けさせる。 「誕生日!」
けんか腰のようにいいながらアキラに飛びついてきたヒカルのいきなりの攻撃に、アキラは布団に押し倒される。 (…進藤が、自分から抱きついてくるなんて…。滅多にない…っていうか、かつてあっただろうか…) 幸せに浸りながらヒカルの細い体をアキラも抱きしめる。 「心臓の音…」 「えっ…?」
「お前が生きてるから、心臓の音がするんだよな…。」 そんなアキラの頬を愛しそうにヒカルは撫ぜると、 「お前より早く起きて、おめでとうっていう筈だったんだけどな!」 そんなヒカルに、アキラは抑えきれなくなって唇を吸うように重ねる。 「塔矢…誕生日おめでとう。お前が生まれてきてくれて…よかった…」 その言葉に、アキラの胸が痛くなる。先ほどとは違った甘いうずきが…。 「なんで…泣くんだよ…?泣くことないだろ…?」 呆れたように笑うヒカルは、楽しそうで…アキラは ヒカルが困ったような顔をして、アキラを引き寄せるとその流れる涙をすくうようになめる。 くすぐった気に肩をすくめるヒカルの前髪をすくう。 (一つになれなくても、君をこんなに感じる…。) 気持ちよさそうに髪を撫でられ、うっとりとアキラを見つめる愛しい人の瞳には自分が映っている。 アキラは口に出さない想いを、ヒカルに感じてほしくて深く口付ける。 ヒカルは、優しく髪を撫でられながら、声に出さない想いをアキラに告げる。
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