★オレとアイツの子供の日。12★



「折角、キミのお母さんにアピールできると思ったのに。」

キミばっかり家の母のお気に入りで、ずるい!そういって、オレを恨めしそうにみるオレのライバル。

(オレの母さんに気に入られて、どうするんだ…??)

やっぱり、塔矢の考えることはさっぱりわからん。
それに、今だって十分に外面のいい塔矢は、母さんのお気に入りなのだ。

ソレをオレが言うと…

「だって、いつかキミと二人で暮らすときにお母さんに味方になってもらいたいじゃないか!!」

「オマエそんな事考えてたのかよ…」
「当たり前だ!僕はいつだって…キミの事を考えてる!!」

眉を吊り上げて…口をへの字に曲げて…

(そんな顔で言うようなせりふか!!)


オレが呆れて、やつの顔をみていると…

「だって、キミは僕にとって無二の人だから」

囲碁においても、そうじゃなくても…。

そう言って、オレの指にキスをする。

「キミと出会って…僕がどんなに幸せか分かるかい?」
「…」
「きっと、囲碁の神様が僕らを会わせてくれたんだ。」
「!」

「僕が初めて会ったときの事…知りたい?」
「…ああ。」
「可愛い子だなって…。」

ちょっと、顔を赤らめて塔矢がいう。
何を言ってるのだ、コイツは。

「オレ、男だけど。」
「…知っている。」
「…オマエ、そーゆー」
「違う!でも、そう思ったんだ。」

キミだから…。

そう言って、塔矢はオレの頬に手を伸ばす。

「だから、初めてうちの碁会所にきたキミと打ってもいいと思った…」
「…オマエって結構現金な。」
「ハハ。まぁ、そうだけど。」
「で?」
「うん、打ったキミはとても強くて正直忘れられなくなった。」
(やっぱり、佐為のこと…)
「だから、キミともう一度打ちたくてキミを探したのに、キミはあんな事を…」

プロを侮辱するような事を…言ったのだ、ヒカルは。

「アレは…」
「分かってる。」
過去の事だから…、と塔矢は笑った。

「でもあの時の僕は、子供で…キミが許せなくて、キミに負けた自分が許せなくてその事を忘れようとしたんだ」
「…」
「キミがプロになって、キミと対局をして…僕はやっぱりキミがライバルだって…キミしかいないって分かったよ。」
「…」

その言葉はオレにとって、すごく嬉しいもので…。
オレの抱えてた不安が全部消えてく気がした。

(お前は、本当のオレ達の対局でオレをライバルだって認めてくれたんだな…)

塔矢に自分を見て欲しくて頑張ってきたのだ。
佐為では無く、自分ときちんと打って欲しくて囲碁を打ち続けてきたのだ。

(ありがとな、塔矢。オレ、本当にオマエがライバルでよかった…)

オレが無言で、塔矢を見てると何か誤解するような顔でちょっと焦った塔矢が…

「でも、キミの事をこうやって寝てもさめても考えてしまうようになったのは、やっぱりこうやって打ち交わすようになってキミの事を知ってからだよ!」

何をあせってるんだろう?この男は??
さっぱり、塔矢が言おうとしてることが分からなくて、オレが首を傾げてると… 塔矢は困ったような顔をした。

「だから、僕はキミをライバルとしてでなく…キミ自身としても必要としてるわけで…」

最後の方が、ちょっとゴニョゴニョいうようになった塔矢をみてオレはおかしくなった。
珍しい事に、塔矢が照れてるなんて!!これが、笑えずにして、何を笑うというんだろうか??

オレがおかしそうにしてるのに気づいた塔矢が、ムッとしたように

「キミは!!僕がちゃんと言おうとしてるんだから、真面目に聞かないか!!」

そのつりあがった眉がおかしかったけど、後が怖いのでオレは真面目な顔をして塔矢を見る。
と、塔矢も「コホン」と咳払いをして、オレの肩に手を置いてオレを見つめる。
その目は、対局中と同じくらい真剣で…どんなときよりも優しかった。

「キミの真っ直ぐなところも、キミの我侭なところも、キミの優しいところも…」
「…」
「そんなキミを育ててくれたのは、囲碁やキミの師匠でもない。キミのご両親だ。」
「…とうや」
「だから、僕はキミのご両親に感謝してるし、親孝行がしたい。キミとの仲も認めて欲しいんだ。」

オレは、塔矢の真剣な気持ちが嬉しくて顔が赤くなってくるのが分かる。
オレがその時言えた一言は、

「ありがとう。」

てだけだった。
それでも、塔矢は優しく微笑んでくれたから…オレも、いつかの約束をしたくなった。

「あのな…」
「うん?」
「いつか…いつかさ。一緒にプレゼントしよーな、オレの親とオマエの親と!!」

まだ、今は…自分がかけた心配分のお礼さえしてないから、さ。

そう言うと、塔矢はすごく幸せそうな顔で笑ってくれた。


それからオレはもう何回か、塔矢とキスをして…社が寝てる部屋に戻った。
塔矢は、そのまますっかり遅くなった風呂に向かったので、お湯があんまり冷めてないといいけど…とオレは思いながら布団にもぐりこんだ。

泣きすぎて重くなってた瞼が、下がって意識を手放す前に…オレはもう一度

『佐為…』

優しい囲碁幽霊に向かって話しかける。

ごめんな。
オレ、きっとお前にも心配かけた。
でも…な。


オレ、まけねぇよ。

きっとお前が見守ってくれてるって思うから…。

(いつか、オレがお前の変わりに神の一手を極めて…お前を悔しがらせるまで、オレは歩き続けるよ!!)

眠りに意識を手放す前に、懐かしい笑顔が

『まだまだですけれどね。』

と笑ったような気がした。

それから、3日後北斗杯の荷物をとりに帰ったオレは、母さんに塔矢から譲り受けたプレゼントを渡す。
オレのプレゼントに涙をこぼした母さんの…その時の顔を、オレは一生忘れないでいようと思った。

◆おわり◆