★雨の日はキミと 4★

 

横をむいてしまった彼をこちらに向かせたくて、僕はそっと彼の首筋に顔をおとす。

「わっ!」

敏感な彼は僕の唇がふれるか触れないか…といった所で、体を引いた。

「たまにこんな事ができるなら、駅から20分も悪くないよね?」

僕がクスクスと笑い声を立てるのに、やっと振り向いてくれた彼は思いっきり不機嫌顔で…

「人がみてたらどーすんだよ?」

真っ赤になって怒る様子がかわいくて

「キミだってさっきしたじゃないか」
と、切り替えす。

「オレはちゃんと人がいないとき狙ってやったんだ!」

そう言って怒鳴っると彼はしまった!という顔をした。

(…ということは、彼は暫く僕を見張ってたということか…?)

そんな様子を想像して、いつもと違う状況に僕は顔がにやけるのが分かる。
その上機嫌な僕とは正反対に、焦ったような彼。

「待ってたのは、ホントに少しの間だけだからな!!それに傘でちゃんと隠したし…」

そういう声が小さくなる。
僕が彼の手を下へと下げたからだ。
傘が二人の顔を隠す。
間近に見える彼の色素が薄い目をのぞき込むと、

「これで周りから見えないよ?」

(どうせ周囲は人通りが少ない上に、突然の雨に急ぎ足の人ばかりで…僕らのことなんて、気にも止めてないと思うけど…ね)
僕はそんなことを思いながら彼に顔を寄せる。

静かな雨音に、傘のドームの中の僕らは本当にこの世に二人きりになってしまったようで…僕はひどく幸せだった。
目を開いたキミは、怒った顔をしているのに、瞳は微笑んでくれていて…僕は、キスした時以上にキミに触れあっている気持ちになれた。

ねぇ進藤…今なら僕にも分かるよ。
キミが僕の両親を…僕の周囲の人を大切にしてくれる気持ち。
キミを育んでくれた時間…キミにつながる人たち。
そうして、今のキミがいる。
僕の隣に。

だから…僕も…

僕は手にある袋をみる。

「何笑ってんだよ?」
不思議げに僕をみたキミ。
キミは、この袋の中身を知ったらなんて言うかな?
僕は自然と微笑んでいたらしい顔を彼に向けてささやいた。

「ねぇ…進藤?」

彼の不思議な色合いの瞳が僕を見つめる。
たっぷり20分の道のりは、僕に沢山の進藤を感じさせてくれた。


おわり